「トランプ大統領」はウォール街の悪夢なのか 今年の大統領選は不確実性の極み

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フェデレーテッド・インベスターズ(運用額3510億ドル)のチーフ株式ストラテジスト、フィル・オーランド氏は「今年の大統領選は不確実性の極みだ」と嘆く。オーランド氏は、1月半ばに株式投資を縮小し始めたのは、トランプ氏が共和党候補指名争いの最有力者となったことが主な理由の一つと説明した。

見えない政策の中身

トランプ氏の政治的な発言には、現在の移民政策や株式市場の行動、外国の通商政策などに対する大衆迎合的な批判と、減税など企業に友好的な姿勢がミックスされている。

もっとも投資家にとって一番不安なのは、トランプ氏自身が具体的な政策の内容とその実行方法をほとんど示していないことだ。

ナティクシス・グローバル・アセットマネジメント(運用額8703億ドル)のチーフ市場ストラテジスト、デーブ・ラファーティ氏は「トランプ氏の政策の中身はほとんどわかっていないので、市場が予想を立てるのは極めて難しい」と指摘。トランプ氏が1日の「スーパーチューズデー」でリードを広げれば、市場のボラティリティは拡大するとみている。

投資家からは、トランプ氏のナショナリスト的な姿勢を特に懸念する声がでている。こうした動きは、既に苦境にある世界経済に壊滅的な打撃を与える恐れがあるというのだ。世界的に貿易額が減少すれば、米国と世界経済成長を抑え、米国企業の利益に響きかねない。

例えばトランプ氏は中国を為替操作国に認定すると提案し、同国の不当な輸出補助や米国の知的財産窃取をやめさせると表明している。さらに米国からメキシコに雇用を移転させようとする企業がいれば、その企業が米国に再輸出する製品に高関税を課す意向で、メキシコとの国境沿いには不法移民阻止のための壁を建設するとまで公言する。

シーブリーズのカス氏は「通商・外交政策は不確実性が最も大きい。トランプ氏はこれらの分野で市場に友好的になれそうにはない」と述べた。

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