今里:人事の採用担当者の負担が増えているということもこの数年のドタバタでよくわかりましたね。
常見:そうですね。今回のスケジュール変更は人事部の負担を無視していて。まあ、20年前は採用シーズンだけ忙しかったのが、インターンシップやらなんやらで年中やらなければならないのがこの10年くらいの人事部なのですけど。
人事部のリソースはどこも足らない
今里:しかも大学3年生と4年生との両方のコミュニケーションを、限られた人事部のリソースでやらないといけないのが本当にお気の毒ですよ。4年生の採用を着地させないと3年生のインターンの企画なんかできないというジレンマがあるけど、3年生の準備をやっておかないとあとで苦しいというスパイラルに入ってしまいます。
それで採用担当者が何人いるかというと、200人を採用する企業でも、採用担当が5人しかいないというのが実態なんです。企業の取り組み方というのも相当難しい対応を求められているのでしょうけれど、人事の方とお話しをさせていただくと、どこも本当にリソースが足りないのだなと思います。
常見:そこは大切な視点ですね。中途採用もあるし、だんだん仕事の中身が変わっていくので、求める人材も変わっていく。そうなると採用の仕方が変わりますよね。いくらITが発達したからといって、力技の部分があるわけだから、まず経営トップが「人事部って新卒採用を年に1回片手間でやっているだろう」という考えを改めないと。
実際、営業と同じくらいの人員が人事には必要じゃないかと思う瞬間もあるんですよ。短期的には今のところ売り手市場だし、中長期的には若者がどんどん減っているという問題があります。
今里:採りたくても求める人物像にかなうひとがいないという時代になっていますよね。いま日本の世代人口は一学年で約120万人いて、約60万人が大学行って、そのうち、約40数万人が民間企業に就職希望という状況ですが、私が新卒で活動した時代には世代人口は200万人を軽く超えていました。大学進学率の大幅な伸びっていうのはあるにしても、これからその40数万人の民間就職希望者が38万人になり、35万人になり…。
常見:そうなんです。たかが数万人だろうと思いつつも、影響ありますよ。業界別に求人数と初期段階で目指す人数は違います。行きたいあの企業に行けるとは限りません。ところで楽天さんは経団連にも入っていないし、所属する新経連はもちろん指針には従わないし、「みん就」のビジネスとしても、かなり早期型のセミナーもやっていますよね。
今里:経団連ルールを守る企業は、経団連にかかわる企業や関連の会社だけですよね。それは学生が就職していく企業のほんの一部を占めているだけじゃないですか。もちろん、そういった企業は大手だし、有名企業だから人気はあります。
しかし他にも有力な中小企業、地方でもきらりと光る企業、あるいはベンチャー企業、そんな企業も沢山存在していて、そこは経団連ルールとは全然違うロジックで採用活動をしているし、留学生とか海外の学生の採用も含めて、もはや通年採用は普通のことになりました。一律にルールを決めて学生に押し付けてしまうのは、個人的には大人のエゴかなと思います。
一方、ある意味でナビサイトが就活のグランドルールを代表していて、世の中に与えるインパクトも大きいので、ルールを掲げて、いつからスタートですよっていうのは、わからなくもない。
その点では、「みん就」は就活インフラである企業へのエントリーシートを提出するツールを提供しているわけではないですし。たくさんの企業情報を採用広告としてサイト上で公式情報として提供しているのではないんですね。
「みん就」のベースはあくまで口コミの掲示板サービス。学生同士が自分のこと、あるいは就職にあたって何を考えているかを意見交換しようというサイトなのです。そういう意味でいうと、就活の動向を知りたい学生がいて、学生と接触したい企業があれば、出会いの機会を積極的に提供したいというスタンスです。だから、経団連の「採用選考に関する指針」については、われわれはそういうルールがあっても別にいいんだけども、そこに遵守してサイトを開けたり締めたりするつもりはないのです。
ただ、お客様である企業人事のなかには、ルールを気にされるお客も多いです。就活を先に控えて世の中を学ぶとか、業界を研究するといったスタンスであれば接触できるけど、やっぱり採用に直接繋がるコミュニケーションはできないというお客ももちろんいる。それはそれで、企業の判断の中で可能なコミュニケーションを取っていただくと。
常見:なるほど。12月だとか、今のスケジュールから言うと、早いとされている時期でも、参画の仕方って、本当にその時期から採用だという会社もあれば。
今里:3月1日の広報解禁以降じゃないとイベントも参画できないという企業もたくさんあります。経団連なり、その会社なりのルールがあるでしょうから、当然その中でやっていると思います。
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