「不本意」な非正社員の満たされない現実 望んでも正社員になれない人を減らせるのか
そうはいっても、企業を取り巻く環境も変化してきています。2013年4月に改正された労働契約法の「5年ルール」がポイントのひとつです。これは2013年4月以降に開始する有期労働契約が通算で5年を超えて更新された場合には、労働者は申込みをすることにより「無期労働契約」に転換できる制度です。企業としては、「5年で雇い止めする」か「無期雇用を認める」かのどちらかを選択する時期に差し掛かっています。
「無期雇用を認める」企業が多く存在
社会保険労務士事務所を経営する筆者が、多くのクライアントから方向性を聞く限りでは、「無期雇用を認める」制度を選択する企業が多いように感じています。これは、質的基幹化が進んだ非正規雇用労働者に代わる人材が容易に見つからないことが理由として挙げられます。
つまり、少子高齢化が進む中で、労働力人口が決定的に不足する時代を迎えつつある企業の課題が「人材確保」であるからです。これからは「雇い止めができない」「解雇が大変だ」というネガティブな想定をもとにした人材戦略は成り立たないのです。この事情は一方で、不本意非正規で働く人たちに対しても影響を与えそうです。
労働力不足は労働市場に変化をもたらします。企業が人材確保に走る以上、必然的に好条件の労働条件が増え、それに伴い正社員の採用も増加することが予想されます。一定程度の景気回復が条件となり、必ずしも楽観視はできませんが、不本意非正規の方も売り手市場に乗じて、再度、正社員へチャレンジする機会が増加しそうです。
もちろん不本意ではなく、みずから望んで非正規雇用で働いている人も多くいます。また、地域限定・短時間正社員などという新しい試みも行われつつあり、これらの事情を鑑みると、不本意非正規労働者を減らしつつ、多様化する就業形態のバランスをいかに取っていくかが企業の今後の課題といえるでしょう。企業は再び雇用ポートフォリオの見直しと調整を迫られているのです。
また、特に若い労働者にいえることですが、再就職に影響があるような「短期間での転職の繰り返し」や「長期間に及ぶ失業状態」をなるべく避け、企業の行う社員教育に積極的に取り組むことで、不本意非正規労働者には陥らない知恵や心構えを身に付けておいたほうがいいでしょう。
国には企業が抱える労務トラブルに対し、もう少しバランスの取れた判断が求められます。ある程度は経営状態に合わせた柔軟な対応ができるようにして、積極的な正社員の採用を促す。そのために、助成金の拡充などでこれまで以上に社員教育をサポートすることが求められます。
要するに企業・労働者・国の三者が、「不本意非正規労働者を減らし、非自発的な離職を減らす」というビジョンを共有し、それぞれの役割に応じた努力を重ねることが、いま求められているのです。
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