「不本意」な非正社員の満たされない現実 望んでも正社員になれない人を減らせるのか

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そもそも「新卒一発勝負」で良い会社に入れなければ、転職でステップアップしていくのがなかなか難しいのが、今も根強い日本の雇用慣例です。若年人口の減少に伴って人手不足が顕在化している今なら「第2新卒」「リベンジ転職」でそれなりの転職先がすぐに見つかったかもしれませんが、当時の日本は不況にあえぎ、「就職氷河期」といわれたほど、新卒の就職環境も厳しかったのです。

営業経験1年でほとんどキャリアのないAさんが、不況下で苦戦したのは致し方なかった面がありますが、それでもなんとか脱したのは幸運だったといえるでしょう。

不本意非正規労働者は推定400万人

一方で、Aさんと同様に正社員を希望しているのにやむをえず、パート、アルバイトや派遣など非正規労働者として働き続けざるをえない人も少なくありません。これらの人たちが「不本意非正規労働者」と呼ばれ、今の日本で社会的な課題になっています。

厚生労働省は今年1月に「正社員転換・待遇改善実現プラン(案)」を発表しました。いわゆる不本意非正規労働者を減らしていこうとする政策です。

不本意非正規労働者の割合は、約2000万人の非正規労働者の18%、実数にして400万人と推定されます。厚生労働省のプランでは、この不本意非正規労働者の割合を全体で10%以下に下げるとともに、正社員と非正規雇用労働者の賃金格差の縮小を図ることなどが掲げられています。

東京都内の飲食店に週4日勤務するBさん(男性・43歳)は、もともとゲームアプリの開発を手掛けていましたが、過重労働がたたって病気になり、6カ月の休職を経て40歳で退職したそうです。病気回復後、求職活動を始めたものの、うまくいかずに、仕方なくアルバイトを始めました。

「正直、将来が不安でしょうがないので、早く安定した仕事に就きたい。このままじゃ、結婚もできない」。Bさんは危機感を募らせています。正社員からの離脱は、その後の人生設計に大きな影を落とす結果をもたらしているようです。

1990年代半ばから大きく増加した非正規雇用労働者は、企業において存在感を増し、量的基幹化から質的基幹化へと進展してきました。企業の人員構成における非正規雇用労働者の比率が高まっただけではなく、業務内容の高度化も進んだため、数だけではなく「質」における比重も高まってきたのです。

総務省の労働力調査によれば、非正規で働く人は昨年12月で2038万人。全雇用者のうちの38%と10年前の30%前後から増えています。2014年11月に初めて2000万人を突破し、その後、さまざまな産業で人手不足が指摘されても、なかなか正社員は増える傾向にありません。

従来の非正規は「家計補助型」が多数でしたが、平成不況以降は、「生計維持型」が急増しました。片手間ではなく、本業として働いているにもかかわらず、やむなく非正規となっている不本意非正規労働者です。働いても豊かになれず、生活していくのも苦しい「ワーキングプア」化しているケースが多いのです。

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