東海道新幹線、「駅弁が買える駅」はココだ 停車時間の長い「こだま」で楽しむ地域の味

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写真左:浜松駅自笑亭の「うなぎ飯」1600円。フードパックに盛られた一番シンプルなタイプだが、ほかほか。 写真右:自笑亭のうなぎ関連弁当は弁当ウォーマーに入れて売られている(掛川駅)

そして、浜松といえばやはり「うなぎ」。浜松駅にはうなぎ関連の駅弁が3種類揃っている。昨今の資源問題の影響から貴重になってきたが、弁当ウォーマーで温めておいてくれるのがいい。できたての時間にあたれば、車内で食べるうなぎ飯とは思えない味わいを楽しめる。

新幹線で味わう、懐かしの「あの」甘味

駅弁ばかりではない。まだ季節的に早いが、三島駅や新富士駅のホームでは毎年5月から9月頃にかけて、懐かしい冷凍みかんを売っている。昭和40年代に全国的なブームとなった氷菓で、東海道新幹線では現在も三島、新富士のほか東京、新横浜などで購入できる。

メーカーによれば、冷凍みかんは車内で20~30分ほど放置して溶かし、実がシャーベット状になった頃が食べ頃とのこと。しかし、新幹線で30分も待っていたら、目的地に近づいてしまう。

新富士駅で購入した冷凍みかん。なかなか溶けず、掛川を過ぎて浜松に近づく頃ようやく食べ頃に

列車が速くなりすぎた結果、冷凍みかんは活躍の場を減らしてしまった。各駅停車に揺られて、優等列車の通過待ちの間に駅弁を買い、夏には窓際で冷凍みかんをのんびり溶かす……。「こだま」の旅には、そんな古き良き鉄道の旅が今も残っているのである。

惜しいのは、新幹線のホームで売っているお酒類が缶ビールなどオーソドックスなものに限られること。駅弁などと共に、その地域の地酒のワンカップやクラフトビールを売店に並べたら、「こだま」の新しい魅力になるのではないだろうか。

車内で酒盛りをする人が増えるのが困るなら、一歩進めて「居酒屋こだまツアー」というのはどうだろう。「こだま」のグリーン車1両をツアー専用車両にして、停車駅ごとにその土地の味や酒を届けるのだ。駅弁業者とタイアップして、ツアー催行時だけホームでの駅弁の立ち売りを復活するのも面白い。

新幹線というと、ビジネスライクな部分やテクノロジーばかりが注目されがちだが、各駅停車の「こだま」には旅情がいっぱい詰まっている。

栗原 景 ジャーナリスト

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くりはら・かげり / Kageri Kurihara

1971年東京生まれ。出版社勤務を経て2001年独立。旅と鉄道、韓国をテーマに取材・執筆。著書に『新幹線の車窓から~東海道新幹線編』(メディアファクトリー)、『国鉄時代の貨物列車を知ろう』(実業之日本社)等。

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