ホンダ「NSX」が価格2倍で復活を遂げる理由 スポーツカーの存在意義はどこにあるのか

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販売台数が少なく希少価値が高いスポーツカーは、売却するときに残留価値が高いという傾向も一般化してきた。国際的に人気の高いフェラーリやポルシェ911などは、欧米や中国の人々が海を渡って中古車を買いにくるため日本での中古車在庫が激減した結果、販売価格が急騰している。日本車では日産のR32型スカイラインGT-R、ホンダ「ビート」、トヨタの「レビン/トレノ」(AE86型)、ホンダのタイプR各車あたりがプレミア価格というべき水準で取引されている。

もっとも、そのような特別扱いを受けることができるのは、本当に性能に優れた、他にない特徴を備えるモデルに限られる。「なんとなく若者が買いに来そうな、適当な価格のスポーティカー」には、今後も勝ち目は一切ない。

「失われない価値」を示し続けてきたホンダ

名車の価値を下げないため、努力を注いできたホンダ(撮影:風間仁一郎)

これからかつての2倍の約1800万円で蘇るホンダNSXは、25年間中古車価格を一定の水準に維持し続けてきた。ついぞ下限が新車価格の3分の1を割ることがなく、最近は上昇基調にあるのだ。それを実現できたのは、当時の日本車最高の280馬力エンジンをミドシップ・マウントし、軽量かつ錆びないアルミボディを全面採用、故アイルトン・セナがイメージ作りを買って出たというずば抜けた個性に加えて、メーカー自身が生産終了後も抜本的なレストレーション(復旧作業)を行う「リフレッシュプラン」を用意し、一旦世に出たNSXの価値は永遠に失われることがない、という姿勢を示しているためにほかならない。

忘れてはいけないのは、スポーツカー専業メーカーであるポルシェやフェラーリ、ランボルギーニは別格として、メルセデスもBMWもアウディもマセラティもジャガーもアルファ・ロメオも、ラインナップに純スポーツカーを持っていたのは限られた時期だけだったということだ。

ブランドとしての存在意義をモータースポーツに見出しているこれらのメーカーであっても、商業的に成り立たせるのは至難の業だったのである。そういう意味で、いまスポーツカーを世に送り出しているメーカーの姿勢は、自動車ファンから喝采を浴びてもまったく違和感はない。

真田 淳冬 コラムニスト

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さなだ きよふゆ / Kiyohuyu Sanada

メーカーはじめ自動車業界に長らく籍を置き、1950年代から現代に至る世界中のさまざまな乗用車をドライブした経験を持つ。歴史、経済、技術といった分野をまたぐ広い知見を買った東洋経済オンライン編集部が独自に著者として招いた。

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