ホンダ「NSX」が価格2倍で復活を遂げる理由 スポーツカーの存在意義はどこにあるのか

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その結果として需要が減退し、普通の乗用車の100分の1しか市場規模がなくなったスポーツカーは、本来的に2倍の値段をつけなければ商売にならなくなってしまった。自動車の研究開発費は売上の3~5%が標準的だが、100分の1しか売れなければ1台あたりの研究開発費は100倍かかることになる。それゆえ日本の多くのスポーツカーはNSXも「フェアレディZ」も「GT-R」(日産)も一度絶滅した後、2倍の値段で復活せざるをえなかったのだ。

GT-Rは同社のアイコンに仕立てようというゴーン社長のリーダーシップがあってこそ、トヨタの86やレクサスのスーパーカー「LFA」は、スポーツカー好きの豊田章男社長が主導する体制と、それを利用するマーケティングの方針があってこそ生まれたものだ。

昨年登場の、新型ロードスター

マツダの新型ロードスター(撮影:尾形文繁)

昨年登場した新型マツダ・ロードスターは「1.5リッターエンジンなのに割高だ」という声も聞くけれども、事情を知っている者からすれば、あの品質であの価格によく収めたな、という印象である。日本のスポーツカーは、欧米でも安定して売れるスケールメリットのあるロードスターとの価格競争に勝てずにすべて駆逐されてしまったと言っても過言ではない。

一方で、よくよくロードスターのスタイリングのバランスを眺めれば、車格に比べてタイヤ外径が妙に小さいことに気づくだろう。タイヤの幅や外径が小さければ、直進安定性やグリップレベルが犠牲になる一方で、起伏による車体への入力が小さいため車体側のコストを抑えて軽く造ることが可能になる。車体を軽くすることにより、エンジンを小さくしても十分な加速力が得られる。

特に日本市場では、アクセラなどから流用できる1.5リッター自然吸気に割り切ったエンジン・ラインナップや、16インチのみに絞ったタイヤサイズ、前輪駆動の量産車と一緒に流す生産ラインなど、涙ぐましい努力によってロードスターの低価格は実現されているのだ。

さて、この勢いで日本のスポーツカーは一時の低迷を脱し、メーカーのラインナップに定着することができるのだろうか。

各社の覚悟次第でそれは十分可能である。マーケットの動きとしては、これから世帯人口がますます減少していく中で、一台の自動車がいわゆるピープルムーバーとして多くの人を運ぶ必要性は低下していくというのが理由のひとつ。個人もしくはふたりの移動手段として、コンパクトでキビキビ走れるスポーツカーはむしろシンプルな選択肢になる。

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