ハリウッドの就職事情、インターン探しで見えた米国エンタメ業界《ハリウッド・フィルムスクール研修記1》

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 フィルムスクールの学生の多くは、夏休み、そしてそれ以降継続的に映画・テレビの関連企業でインターンをします。ほとんどのインターンは「無給」ですが、終了すると学校の単位を取得することができるようになっています。逆に、学校のカリキュラムの一環として単位が取れる学生でないと、名のある企業ではインターンとしても受け入れてくれません。これは学生がインターン中に突然辞めてしまうことを防ぐこと、そして記念受験的に有象無象の輩がインターンに応募してくるのを少しでも防ぐためのようです。

フィルムスクールの学生が、せっかくの夏休みに長期の旅行に行くでもなく、タダ働きのインターンに励むのは、ハリウッドでは、日本のような「就職活動」の概念がほぼ存在しないためです。

正確に言えば、スタジオ(注*1)の法務や会計の職はロースクールやビジネススクールなどからの採用がありますが、”ディベロップメント”と呼ばれる企画開発職やマーケティングの分野では、無給のインターンとして入り込み、評価を得て採用されるのが、最も一般的な就職のルートなのです。インターンの後も、最初は1年の契約社員というところから始まるケースもあり、そこでも継続的に評価を上げていかないと本採用には至りません。

これがハリウッドの最強権力であるともいわれるタレントエージェンシー(注*2)に至っては、メールルーム(文字どおり、社外からのメールを分類するあのメール室です)からキャリアをスタートするのが伝統的です。メールを分類するなかで「誰が誰と知り合いか」といった業界の人脈ネットワークをつかむところから始まるのです。年収1500万円クラスが将来的に約束される大手テレビ局に、数回の面接で新卒採用される日本とはかなり事情が異なります。

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では、インターンの仕事内容とはどんなものなのでしょう。もちろん会社によって違いはありますが、プロダクションカンパニー(注*3)の場合、ほとんどの募集要項に共通して掲載されている業務内容とは「お茶くみ」「コピー取り」「電話受け」「掃除」「使いっ走り(公共交通が発達していないロサンゼルスなのでマイカー所有が条件)」といったものです。いまどき、アシスタント業務の募集要項でもこんな直接的な書き方をしている企業は日本ではほとんど存在しないでしょう。

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