ハリウッドの就職事情、インターン探しで見えた米国エンタメ業界《ハリウッド・フィルムスクール研修記1》
これらの基本業務に加えて、仕事らしい仕事としては、「カバレッジ(coverage)」というものがあります。これは企画開発職のインターンがまず経験する仕事で、プロデューサーのもとに毎日、山のように送られてくる売り込みの脚本を最初に読み、2、3ページのストーリーの要約と評価をつけるという仕事です。多忙な上司が、脚本をすべて読まなくても良いようにするためです。
ある有名プロダクションでインターンを始めたクラスメート曰く、暗めの狭い部屋にインターンは閉じ込められ、ひたすら脚本を読む環境だそうです。彼はこの部屋を”Intern Cave(洞窟)”と呼んで眉をひそめていました。
120ページの脚本を書いた挙句、学生に読まれて却下されるのもかわいそうな話ですが、それがハリウッドの現実です。AFIの講師で過去、このカバレッジを生業にしていた人がいましたが、「毎週30本の脚本を3年間読み続けた」とのことです。約4500本の脚本の中から何本がスタジオの幹部に上げられ、実際に読まれたか。たったの「3本」だったそうです。ちなみに、その3本の中から実際の映画になった作品は「0本」とのこと。
却下された脚本家たちもかわいそうですが、カバレッジの仕事もなかなか悲惨なものです。このような仕事を嫌って、ブランド力がなくても小規模なプロダクションで上司のプロデューサーともっとダイナミックな仕事に携わりたい、というクラスメートもいます。
前述のようなタレントエージェンシーを目指すクラスメートもいます。マット・デイモンやロバート・デ・ニーロが所属する業界最大手の1つ「ウィリアムモリス・エンデバー」でインターンするクラスメートに、「どんな仕事をするの?」と尋ねたところ、冗談交じりに「Kiss the ass and eat the shit(ケツにキスしてクソを食らう =ゴマすりでもバカなことでも何でもやる)」と言っていました。
まさに、トム・クルーズ主演の映画「ザ・エージェント」のような世界に彼は飛び込んでいくようです(まだご覧になっていない方は、トム・クルーズがクライアントとの契約を継続するために血眼になる姿をぜひご鑑賞ください)。