iPhoneロック解除、アップルの苦しい事情

司法省の要求を拒否し続けるしかない

はからずもiPhone、iOSのセキュリティが(FBIが簡単に中を覗き見できない程度に)強固であることを示しているが、これに対して捜査当局はアップルに端末内の情報にアクセスするためのソフトウェアを開発し、それを捜査の際に使用できる形にすることを要請していた。

具体的にどのようなソフトウェアかはわからないが、iOS自身を改造してバックドアを設置するものだと考えられる。いずれにしろ、アップルがロックされたiPhoneにそうした措置が可能なのだとしたら、アップル自身は情報アクセスするための”隙間”をiPhoneに持たせていることになる。

「市民に対する身も凍るような攻撃だ」

先週16日、アップルのティム・クックCEOは、こうした捜査当局の要請をブログの中で「市民に対する身も凍るような攻撃だ」と強く批判して注目を集めた。米政府に端末内情報へのアクセスキーを渡すことを拒否したクック氏の声明には、グーグルのスンダー・ピチャイCEOが賛意を示した他、フェイスブックも企業としてアップル支持の声明を出している。

これに対して米司法省は19日、裁判所を通じて再びアップルにロック解除をするよう書面で求めた。

実は米国には1994年に成立した通信傍受支援法がある。この法律では、必要と認められた場合に通信を傍受するため、通信事業者が使う機器(あるいは機器内のソフトウェア)の設計変更を裁判所を通じて要請できるが、iPhoneをはじめとするコンピュータ端末には適用されない。

従って司法省がアップルにロック解除を強制することはできないと見られるが、司法省は別の角度からアップルに圧力をかけた。冒頭でも述べたように、アップルが乱射事件の犯人が所有していたiPhone内にある情報へのアクセスを可能にしないのは、個人情報流出を手伝った企業というイメージでブランドを傷付けられたくないからだと指摘しているのだ。

司法省の主張では、対象となるiPhoneでのみ機能するロック解除ツールをアップルが作ることは可能だとしている(一方、アップルは”ない袖は振れない”とそれを否定している)。端末ハードウェアにはそれぞれ固有の情報が埋め込まれているため、今回のケースでのみロック解除することはできるだろう、というわけだ。

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