iPhoneロック解除、アップルの苦しい事情 司法省の要求を拒否し続けるしかない

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アップルは司法省の要求に対し、全iPhoneを危険にさらすことになる「全市民への攻撃」と反論している。それに対し、司法省側は「そんなことはない。特定のiPhoneのロックだけを外すことはできるはず」と主張しており、主張は平行線だ。

司法省は、「特定のiPhoneのロック解除は可能」であることを前提に、できることをできないと言い張るアップルの企業姿勢を批判。アップルがロック解除に応じないのは、市民への攻撃を防ぐためではなくブランドを守るためだと言い換え、暗にテロと戦いにおいて政府の邪魔をしているというメッセージを発することで、一部のアメリカ市民を味方に引き込もうとしているようだ。

アップルが応じることができない理由

もし、アップルがこの司法省の要求を飲んだ(飲めた)とすれば、そもそもiPhoneには(アップルだけが鍵を持つ)バックドアが存在していると認めることになってしまう。つまり、アップルが犯人の端末の鍵を開けることが可能であると認めてしまえば、司法省が指摘するようにブランドイメージを大きく傷付けることになるに違いない。そのため、鍵は開けられない、との主張を繰り返すしかないのだ。

アップルは今後も、”今回の事件における協力”という矮小化を避け、iPhoneユーザー全体、あるいはスマートフォンを中心とした現在の情報通信および端末産業全体への挑戦であると指摘して抵抗するだろう。それしか事業への影響を抑えながら、世論を味方に付ける戦略はないからである。

スマートフォンにはメール、スケジュール、LINEなどのメッセージ交換、写真などはもちろん、銀行口座アクセスの痕跡などさまざまな情報が集まっている。利便性が高まり、社会に存在するあらゆるサービスが、スマートフォンを通じて使えるようになるほど、セキュリティ上のリスクも高まり、また一方で今回のように犯罪やテロの捜査に寄与する割合も高くなる。

今回はアップルと司法省の戦いとしてクローズアップされているが、これは対岸の火事とはいえない。今後、同じような議論、対立は日本でも起こってくるはずだ。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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