大人の実力 浅田次郎著
大人の胆力、大人の責任、大人の条件。本当の大人とは、人間の値打ちとは。人の生き方にかかわる68編によって構成されている。多くは小説の一節で1編が3ページを超えることはない。『蒼穹の昴』『王妃の館』『珍妃の井戸』(出典一覧に誤植あり)など、浅田ファンがたっぷり楽しんだ28の作品からアンソロジーのごとくに編まれている。
原作ではプロットの面白さについ軽く読み飛ばしてしまった箇所が、含蓄深く迫ってきて複雑な気持ちにさせられた。というよりも、こうした話がはめこまれていることが作品に深みを与えていたことを、読者は改めて認識するだろう。
さすがにどれも短く切り出されているので、人物の相関や背景がわからない話もあり、これは原作を読んでいないほうが悪いと思ってしまうのも悔しい。それにしてもこんな魅力的な大人たちは先細りの一途か。いや「本さえあれば子は育つ」というあとがきをかみしめることにしよう。(純)
海竜社 1470円
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