経営技術では「イノベーション」は起こせない 「揺らぎ」の体験こそがひらめきを生む

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──人の思考や記憶のクセもわかるとか。

教育や学習、もちろんマーケティングにも生かせる。たとえば、人はどのくらい頻繁に起きているかを判断するときに、何かの基準を代用して思う。それは思い出しやすさだったりする。つまり思い出しやすいことはよく起きていると。少年犯罪はメディアが大きく取り上げ、印象に残って思い出しやすくなる。データを調べると、歴史的に見て今は少年犯罪が少ない。こういう現実があるにもかかわらず、近頃の子供は野蛮だと思われてしまう。実際には老人の犯罪のほうがずっと多い。逆に、思い出しやすいことによる勘違いをマーケティングに活用することもできる。

──意外に判断はいいかげん?

事例のひとつに、「基準値に引きずられる」ことがある。たとえば、ある県の市の数を聞く際の聞き方。それを10より多いか少ないかで聞くグループと、20を基準にするグループとに分ける。そしてどのくらいの数を想定したか聞くと、グループ分けの際に見せられた基準値の10とか20とかの数字に引きずられる。また、ショーウインドーには値の高い商品を出し店内の商品にお得感を出したりする。この効果はアンカリングといわれるマーケティング用語になってさえいる。

脳科学でわかる認知はとても限定的

『教養としての認知科学』(東京大学出版会 2700円+税/271+xiページ)

──最近の脳科学の進展によって、知性の解明は進むのでは。

脳科学は認知科学の中に強く入り込んでいる。脳科学的な方法を使っている研究者は多く、もはや別学問とはいえない。ただ、脳がわかればすべてがわかるとはいえない。脳の賦活部分と認知活動一般との対応関係はわかっても、その際の認知活動の中身はきちんとはわからない。脳科学でわかる認知はとても限定的なのだ。たとえば算数の四則計算をどう教えようかというときに、脳科学は現時点ではほとんど役には立たない。病気治療では大事な学問だが。

──ロボットがいずれ知性を持つことになりますか。

知性は生きているということ、生命があることと一体であり、分けられない。そういう性質を持っているところが知性の面白いところではないか。生きていないものが知性一般を持つのは、将来はわからないが、今のところはない。

塚田 紀史 東洋経済 記者

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つかだ のりふみ / Norifumi Tsukada

電気機器、金属製品などの業界を担当

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