整備新幹線には、鉄道建設・運輸施設整備支援機構が建設・所有し、営業主体であるJRに施設を貸付け(上下分離方式)、建設費はこのJRへの新幹線貸付料のほかに国や地方自治体の財源などから捻出するという制度が組まれている。そのため、財源や建設費、関連して建設ルートなどを巡って政治に左右されることが多い。
しかし、中央新幹線は整備新幹線ではないから、上下分離を基調とした整備方式は必ずしも当てはまらない。着工に伴う基本条件(並行在来線の経営分離に対する沿線自治体の同意等)の充足も不要である。政治の影響を最小限に抑え込むことも不可能ではない(やろうと思えば)。
また、整備新幹線の最高設計時速は建設費抑制などの理由で260㎞にとどめられているが、中央新幹線にはそのような足かせはない。
ただし、整備新幹線ではないといっても、中央新幹線の原型は1973(昭和48)年に全幹法に基づき国が定めた基本計画にある。2011(平成23)年5月には建設主体・営業主体にJR東海が指名されて整備計画が決定され、JR東海は9兆300億円(大阪まで)に達する建設費を全額負担する意向を示しているものの、全幹法の目的や経緯からして中央新幹線は一企業の利益だけを目的にする事業ではない。
JR東海は経営主体として適任か
他方で、全幹法第6条は、事業主体について「鉄道・運輸機構、営業主体として指名しようとする法人その他の法人の中から選ぶ」としており、JRのような民間企業を排除していない。JR東海から国交省へなされた「設備投資の自主性、経営の自由など、民間企業として当たり前のことが全幹法によって阻害されることがないかどうか」旨の照会に対しても、2008(平成20)年1月に「民間企業も建設主体となり得る」との回答が国交省からなされている。
加えて、JRはその設立の経緯となった日本国有鉄道改革法により、我が国の基幹的輸送機関として果たすべき機能を効率的に発揮することが期待されている。
全幹法の趣旨からいっても、組織、規模、財政的基盤、地理的な経営範囲を踏まえれば、JR東海は東海道新幹線のバイパス線である中央新幹線を建設、経営するのにふさわしい立場ということになろう。整備新幹線の条件や整備方式にとらわれず、国などの財源や予算配分に左右されないで済むのも、民間企業であるJR東海には望ましいことである。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら