2015(平成27)年11月10日、ある鉄道事故の民事訴訟に関して、最高裁判所(以下「最高裁」)が訴訟当事者に対し弁論を開くと通知した旨の報道に接した。
この裁判は、2007(平成19)年に発生した認知症患者の鉄道事故につきJR東海がその遺族に対して損害賠償を請求していたものである。2014(平成26)年4月24日に名古屋高等裁判所(以下「名古屋高裁」)が判決を下していたが、その後不服申立がなされ最高裁に係属していた。
最高裁が弁論を開く場合、高裁の判決を変更することにつながることが多いため、最高裁がどのように判断するのか注目されるところである。
どんな事故だったのか
この鉄道事故(以下「本件事故」)の概要とその後の裁判の経過は以下のとおりである。
2007(平成19)年12月7日、東海道本線共和駅(愛知県)にある無施錠のホーム側フェンス扉を通り抜けて線路に下りたA氏(男性・当時91歳)が、走行してきた列車にはねられて死亡した(線路への進入方法は裁判所の認定による)。
この影響で東海道本線の上下列車合わせて20本に約2時間の遅れが発生した。JR東海は、A氏の遺族(妻と子4人)に対して事故により発生した振替輸送等の費用相当の719万7740円の損害賠償を求め、名古屋地方裁判所(以下「名古屋地裁」)に提訴した。
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