正規・非正規の「賃金差」は埋められるのか くすぶり続ける「同一労働・同一賃金」問題

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ただ、その対応をした上司としての当方は、何とも歯切れの悪い説明しかできませんでした。背景には正社員と非正規社員の間での登用には大きな壁があったからです。そもそも、全社的に業績が下がってコストダウンの通達があった時期。

人事部から「正社員の採用は凍結中だからアルバイト採用なら認めます」と全社の事情で通達がありました。さらにアルバイトから正社員への登用も凍結。そこで新たな戦力となる社員を非正規社員で採用。「アルバイトは正社員の補助的な仕事を担う」と定義された人事マニュアルがあるものの、正社員と分け隔てなく仕事を任せていきました。すると、採用したアルバイトの方々は優秀で生産性も正社員より高いくらい。こうなると、補助的な仕事どころか

「悪いけど、この仕事もお願いしていいかな?」

と正社員を超える業務負担になっていました。当初は雇用形態で分け隔てない仕事の機会を提供しているのだ……と自分の中では整合性をとっていました。が、当時のアルバイトの方々にすれば「正社員並みの給料をください!」と強く感じたことでしょう。不満はもっともな話です。

ただ、正社員への登用も凍結していましたので「感謝している。大変なことはわかるけど、力を貸してほしい」と無理を承知で格差のある賃金水準のアルバイトの方々に負担をかけていました(ご負担をおかけした方、当時はすみませんでした……)。

同じように「変だとはわかっているけど」同一賃金にできない会社の事情に苛まれる上司や従業員は多いのではないでしょうか?

国際労働機関(ILO)では、基本的人権のひとつ

ちなみに同一労働同一賃金とは、同一の仕事(職種)に従事する労働者には同一水準の賃金が支払われる「べき」だという概念。ちなみに国際労働機関(ILO)では、同原則をILO憲章の前文に挙げて、基本的人権のひとつとしています。日本では正社員と非正規社員との賃金格差をなくすための施策として2015年9月に施行されました。

ちなみにバブル崩壊以後に企業は正社員を減らし、賃金を安く抑えられる非正規社員を増やしました。結果として非正規は増加、全労働者の約4割を占めるまでになっています(総務省「労働力調査」)。厚生労働省の調査によると非正規社員は正社員の賃金の約6割。さらに正社員は多くの場合、年功序列型賃金制度によって賃金が上昇していきますが、非正規社員の場合はほとんどが横ばい。所得格差は広がっていくばかりなのです。

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