北朝鮮の「暴走」を止める道はひとつしかない 結局はアメリカが北朝鮮の命運を握っている

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北朝鮮が7日正午(日本時間12時半)に行った発表では、「高度500キロの軌道に進入させるのに完全に成功した」だった。しかし、これだけでは不十分だ。

中国(新華社)は、「正確に軌道に送り込んだ」と報じた。これは北朝鮮の発表をそのまま踏襲した感じであり、中国と北朝鮮の特別な関係にかんがみると参考とすべき説明だろうが、これだけでも足りない。

アメリカは「軌道に入った」とは発表せず

北アメリカ航空宇宙防衛司令部(NORAD)という、北米をミサイル攻撃から防衛するシステムがあり、冷戦時代はソ連からの核搭載ミサイルが飛んでこないか、レーダーで監視していた。世界で不審な飛行体を監視している最高権威といってよい防衛システムだ。北朝鮮が前回(2012年末)「人工衛星」と称するものを打ち上げた時、NORADは同日中に、発射の事実とともに「軌道に入ったらしい(appeared to achieve orbit)」と発表していた。

しかし今回、NORADはなかなか発表を行わなかった。結局、8日になって、米戦略軍の発表を引用する形で、発射されたものが「宇宙空間に打ち上げられた」とだけ発表した。NORADと米戦略軍は事実上一体なのでどちらからの発表であっても同じことだが、今回「軌道に入った」ことに直接言及しなかった理由は不明だ。

いずれにしても、呼称についての混乱は遠からず解消されるだろう。もし、北朝鮮が「人工衛星」と呼ぶものが地球を周回する軌道に入り、かつ電波を送ってきていることが確認されれば、「人工衛星ではない。ミサイルだ」と決めつけるのは困難になるからだ。

ロケットに関する北朝鮮の技術レベルは、ロケット先進国と比べまだ低いレベルにある。2012年4月には発射実験に失敗した。しかし、その8カ月後には前述の発射実験を行い、「人工衛星」を曲がりなりにも地球周回軌道に乗せることに成功した。ただし、その時は、何らかの技術的理由で「人工衛星」から電波を送ってこなかった。そのため、NORADは「物体」と呼んだ。「何の音も電波も出さない物体が軌道を回っていた」のだ。

今回の発射実験がどの程度の成功であったか、専門的立場から客観的に、正確に分析してもらいたい。

今回発射したものが何であるかを分析することは極めて重要だ。そしてさらに重要なことは、どうすれば北朝鮮の核兵器やミサイルの発射を止めさせることができたかを真剣に考えることだ。

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