北朝鮮の「暴走」を止める道はひとつしかない 結局はアメリカが北朝鮮の命運を握っている

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米国が北朝鮮に安保理決議の履行を求め、また中国に対し、北朝鮮への圧力を強めるよう要請するのは、法的には当然のことだ。安保理決議は忠実に実行すべきであり、中国もその決議に賛成したし、北朝鮮としても国連の一員なので決議に拘束される。

しかし、この当然のことが結果につながらないのが現実だ。これまで何回も試みては失望させられてきたことであり、国際社会としてこの現実を直視して、問題の本質を見つめなおすべき時が来ているのではないか。

問題の本質をまとめると次のようになる。

問題の本質は?

人工衛星打ち上げの成功を報じる重大放送に耳を傾ける平壌市民(写真:REUTERS/Kyodo)

第一に、北朝鮮は国家として存続するには核兵器とミサイルが必要だと思っている。その認識を間違っていると批判するのは簡単だが、北朝鮮の認識は正しく理解しなければならない。北朝鮮に味方するという意味でなく、正しく知ることだ。

第二に、北朝鮮が国家として存続することができるかという問題について、北朝鮮と交渉できるのは米国しかいないという点だ。中国はすでに北朝鮮を国家として認めている。北朝鮮という国を脅かしているのは米国だけだと北朝鮮は思っている。

要するに、国際社会にとっては北朝鮮に安保理決議を順守させることが目標だが、北朝鮮にとっての目標は何としてでも国家としての存続を確保することなのだ。このズレを解消しなければ、北朝鮮の核とミサイルの問題は、残念ながら、解決しないだろう。

したがって、制裁措置を強化する道を追求すると同時に、米国には北朝鮮と直接交渉することを求めるしかないだろう。北朝鮮の国際社会における地位を認める代わりに核とミサイルを放棄させる交渉だ。繰り返しになるが、その交渉をできる国は米国しかない。

美根 慶樹 平和外交研究所代表

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みね よしき / Yoshiki Mine

1943年生まれ。東京大学卒業。外務省入省。ハーバード大学修士号(地域研究)。防衛庁国際担当参事官、在ユーゴスラビア(現在はセルビアとモンテネグロに分かれている)特命全権大使、地球環境問題担当大使、在軍縮代表部特命全権大使、アフガニスタン支援調整担当大使、日朝国交正常化交渉日本政府代表を経て、東京大学教養学部非常勤講師、早稲田大学アジア研究機構客員教授、キヤノングローバル戦略研究所特別研究員などを歴任。

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