”既得権益”崩壊は、マスコミ人の働き方をどう変えるか?《若手記者・スタンフォード留学記 38》

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 もちろん、金を出してメルマガを購読してもらうのは大変でしょうが、1000人の読者を集めるのは、フリーとして原稿料で月50万円稼ぐのに比べれば楽でしょう。

しかも仮に、メルマガに割く労力を労働時間の30%とすると、残り70%でやりたい仕事をできるわけです。本を書いてもよし、大学に通ってもよし、講演をしてもよし、ビジネスをしてもよし。つまり、メルマガ購読料を固定給500万円として、残りは自分のがんばり次第でいくらでも稼げる成果給です。外資系の証券マンみたいな給料モデルです。

もう一つのビジネスモデルは、各分野の一線のジャーナリストや研究者を集めて、一つのサイトを立ち上げるかたちです。

このモデルの代表例は、元日経新聞記者の渡邉正裕氏が運営する「マイニュースジャパン」、元NHKの池田信夫氏が立ち上げているアゴラ(現在購読料は無料。有料でも相当な購読者を集められるはずです)でしょう。

たとえば、10人集まってサイトを立ち上げて、年会費1万円として、1万人の購読者を集めれば、1億円の収入(1人当たり1000万円)となります。サイト運営のコストは劇的に下がっていますので、収入の大半が利益になるでしょう。質の高い筆者が集まったサイトであれば、広告を出稿したがる企業も出てくるかもしれません。

「3000円を出して新聞を購読するよりも、選りすぐりの人間の記事を集めたウェブサイトに月1000円を払いたい」--そう思っている潜在的な読者はたくさんいるのではないかと私は考えています。

一般的なニュースはヤフーなど、ニュースを集約した無料のサイトでチェック。それに対する解説や分析は、金を出して、好きなジャーナリストたちのサイトを購読する。そうした傾向が顕著になるのではないでしょうか。

これから経営危機が続き、現在、社内に埋もれている優秀なジャーナリストがフリーのマーケットに出てくれば、彼らを統合してビジネスを行いやすくなるでしょう。

加えて、情報へのアクセスという点でも、政府・企業を問わず、ネットを通して得られる公開情報が劇的に増えています(英語サイトも加えれば、膨大な情報が入手できる)。しかも、上杉隆氏によると、民主党が政権をとれば、記者クラブを開放することを宣言しているそうなので、大手メディアに所属していないデメリットも徐々に低下していくでしょう(記者クラブなんて、先進国として恥ずかしい限りですが)

フリーのジャーナリストに向くのは、深い調査報道、コラムや分析といった類の記事です。スクープは、これまでどおり大手メディアの仕事になるはずです。スクープは、宝くじの大当たりのようなものですから、そんな確率の低いものに時間をかける余裕はフリーの人間にはないでしょう。

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