"預金者を罰する"マイナス金利で起こること 欧州では金利体系が混乱、年金運用に打撃

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住宅ローン金利をめぐっては、欧州でさまざまな混乱が生じている。スイスでは、マイナス金利政策の導入で住宅ローン金利がかえって上昇するという逆の現象が起きている。銀行が同政策のコストをローンの借り手に転嫁するためだ。もし中央銀行がマイナス金利をさらに引き下げたら、スイスでは住宅ローン金利は上昇すると見られている。

デンマーク、ポルトガル、スペインなどでは、住宅ローンがもしマイナス金利になったら、銀行はどうすべきか、という問題が昨年大きな話題になった。結果的には、既存の約定の内容によっては銀行がマイナス金利のローンを認めなければならないケースが一部あるが、大半はマイナス金利にならないように下限が設定されたようである。

「通貨安競争」の再燃を懸念する海外報道

日銀は今後、経済情勢によってはマイナス金利をさらに引き下げていくつもりがあることを示している。しかしながら、この週末の海外の主要メディアは、日銀のマイナス金利政策の意図は円安誘導にあるようだ、と早速報じ始めている。複数の米紙は、「日銀のこの決定は、中国と日本の通貨安競争を激しくするかもしれない」といった論調で報じている。また、TPP(環太平洋経済連携協定)参加国でマイナス金利政策を採用しているのは日本だけであるため、TPP反対派の米議員が今後どういった反応を示すのか注意が必要である。

長期的な問題として、国債の金利がここまで下がると、政府や国会議員が財政再建の必要性を感じなくなってくる恐れもある。構造改革に取り組みやすい環境を作るためのものだったはずの超金融緩和策が、問題先送りに加担してしまってはまずい。

加藤 出 東短リサーチ社長

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かとう いずる / Izuru Kato

1988年、横浜国立大学経済学部卒業、東京短資入社。金融先物、CD、CP、コールなど短期市場のブローカーとエコノミストを2001年まで兼務。02年2月よりチーフエコノミスト。13年2月より東短リサーチ代表取締役社長。短期金融市場の現場から各国の金融政策を分析。『日銀は死んだのか?』『バーナンキのFRB』『日銀、「出口」なし! 異次元緩和の次に来る危機』  など著作多数

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