"預金者を罰する"マイナス金利で起こること 欧州では金利体系が混乱、年金運用に打撃

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それなのに、なぜECBも日銀もマイナス金利政策を採用したのかといえば、その真の目的が「通貨安誘導」にあるからである。短期金利がマイナス金利だと、海外の投資家はその通貨をやや買いにくくなる効果がある。

しかし、ECBや日銀のような大国の中央銀行は「為替操作が目的」とは言えないので、表向きには、「量的緩和で配ったお金が銀行から外の世界に染み出すようにマイナス金利にした」と説明している。だが、欧州ではその「染み出し効果」が実際は極めて限定的であり、実は欧州の中央銀行らもその効果にはあまり期待していない。

先月ドイツに出張した際は、「金融規制強化の影響も大きいため、マイナス金利を課されたからといって銀行が貸出を増やせるというものではない」という話が市場関係者から聞かれた。

量的緩和に効果なし、黒田総裁の説明も問題

第二の問題は、今回の日銀の判断は、量的質的緩和策(QQE)の下での国債やETFの購入をこれ以上拡大することは(不可能ではないものの)問題が多いこと、さらに、2%のインフレ目標達成のためには、従来のQQEの効果に限界があったことを改めて市場に示してしまった。日銀は2013年4月から始めたQQEによって、世界中のどの中央銀行も行っていない凄まじい量の資金供給を行っているが、それでも目標到達はまだ遠いところにある。

第3の問題は、日銀のコミュニケーション政策である。黒田東彦日銀総裁は、これまで付利金利の引き下げをハッキリと否定し続けてきた。それだけに、今回のサプライズで、市場が黒田総裁の今後の発言をますます信じなくなっていくのではないかと懸念される。マイナス金利政策を先に導入しているECBの場合は、導入のかなり前からその可能性を示唆して、金融機関にマイナス金利に向けた準備期間を与えていた。日銀は市場の期待を言葉でコントロールすることがますます難しくなっていくだろう。

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