"預金者を罰する"マイナス金利で起こること 欧州では金利体系が混乱、年金運用に打撃
マイナス金利政策で収益が圧迫されている金融機関が増加していることもあって、ドイツやスイスの銀行経営者は激烈な口調で中央銀行を非難している。
銀行の収益が悪化しても、それ自体は大半の人々にとって関係のない話ではないか?と疑問も持たれる方もいるだろう。しかし、現在の厳しい金融規制の下では、体力が弱った銀行は中小企業への貸出を増やせなくなってしまう。
国債で運用できず、年金に大打撃
また、マイナス金利政策で国債の金利が低下しているため、欧州の年金基金や保険会社の運用は深刻な状態にある。国債を買っていては契約者が納得する利回りを確保できなくなるため、しかたなくポートフォリオ・リバランスを行っている機関投資家は多い。黒田総裁は記者会見で、マイナス金利政策の意図のひとつは運用主体にポートフォリオ・リバランスを促すことにあると語った。
実際、スイスの年金基金などは、昨年春頃に、株、金、エマージングの国債などに運用資産をシフトしたと報じられていた。最近の金融市場の状況から、それらは評価損を抱えてしまったと推測できる。そういった情報が耳に入れば、国民は不安を感じ、消費を活発化させる気にはならないだろう。なお、スイスの民間大手銀行の幹部は、昨年の地元紙のインタビューで、「マイナス金利政策は、預金者を罰することで、彼らに間違った投資判断を行わせている」と中銀を非難していた。
日銀の今回のマイナス金利政策は、金融機関の収益を過度に悪化させないように、三階層式となっている。マイナス金利を適用するのは、日銀当座預金の一部にとどめられる。銀行間オーバーナイト金利が0.1%に近い水準で推移するのに必要な額(10〜数十兆円程度)にだけマイナス金利が適用される(残りの2百数十兆円はプラス0.1%か0%)。これは、QQE導入後、日本の金融機関は欧州とは比較できないほど凄まじい額の超過準備を保有してきたことへの配慮となっている。実際に全額にマイナス金利をかけたら、収益悪化で銀行株は暴落してしまう。
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