"預金者を罰する"マイナス金利で起こること 欧州では金利体系が混乱、年金運用に打撃
とはいえ、1月29日に日本の国債は8年物まで利回りがマイナスになった。10年国債を見ると、スイスを除けば、他のマイナス金利政策を行っている国よりも日本のほうが既に大幅に低くなっている。日銀の国債買入は欧州よりも遙かに強烈だからだ。日銀の方が欧州よりも国債買入策やマイナス金利政策が長期化すると、市場が予想していることも、原因と考えられる。
また、日本の場合、金融機関同士の競争は欧州よりも遥かに厳しい。マイナス金利政策によるコストを消費者に転嫁することは、欧州の銀行に比べて難しいだろう。となると、欧州よりも日本のほうが、金融機関への打撃は深刻になってくるかもしれない。
タンス預金が増え、住宅ローン金利は上昇?!
先ほど、欧州では大半の個人預金の金利はマイナスになっていないと述べた。しかし、もしマイナスになったら、預金が先行き目減りすることを皆が予想するため、それは消費を活発化させるはず、という観測が聞かれることがある。だが、オランダの大手金融機関INGが昨年15か国で行ったアンケートは異なる結果を示していた。
これによると、預金金利がマイナスになったら、「通常より預金を取り崩して支出を増やす」と答えた人の割合は9.9%にとどまった。しかし、「預金からかなりの額の現金を引き出して、安全な場所にしまう」という回答が33.3%にものぼった。「貯蓄目標額に到達するために、より多くの額を貯金する」という回答は10.9%あった(米国の場合は14.1%と多い)。
INGのこのレポートは、「マイナス金利政策は人々にネガティブな反応を起こさせる」と結論付けていた。日本でもマイナス金利という「ムチ」で国民を叩いても、景気刺激効果は限られると考えられる。
また、前述のアンケートでは、株式などの代替投資手段に資金を回すと答えた人が合計33.2%いたので、マイナス金利政策が株や不動産などの資産価格を一時的に押し上げる可能性はある。しかし、そういった形で生じたブームは後始末が大変だ。
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