琴奨菊の勝因は「重層的メンタル采配」にある

「琴バウアー」だけじゃない!妙策の数々

琴奨菊関の代名詞にもなった、立ち合い前のルーティン「琴バウアー」は、精神面の弱さを克服するため、メンタルトレーニングの第一人者である東海大学体育学部・高妻容一教授の指導のもと編み出されたものだそうです。また高妻教授からは、平常心を保つために意識して深呼吸をする方法なども学ばれたとのことです。

認知心理学をベースに作られているアンガーマネジメントでも「感情に意識して間を持つ」ために、「呼吸リラクゼーション」というテクニックを設けています。なぜなら、人は怒りを感じていると、呼吸が速く浅くなって冷静になれないからです。

一方の「琴バウアー」は快勝したときの動きをもとに構築されたようですが、アンガーマネジメントでも「プレイロール」という、自分の理想とした人を演じる(徹底的に真似する)テクニックがあります。「いいときの自分を演じる」というルーティンは、私たちも活用できそうですね。

ほかの競技からもどんどん学ぶ

また琴奨菊関は、初場所8日目、難敵・稀勢の里戦に勝利した際、「マエケン体操」を取り入れていることを明かしています。

マエケン体操とは、その名の通り、広島カープからロサンゼルス・ドジャースに移籍する前田健太投手がウォーミングアップに実施しているもの。肩甲骨を柔らかくする効果などがある動きで、相撲でも腕を長く使えるメリットがあるそうです。事実、この一番でも両腕をうまく密着させ、稀勢の里関の反撃を許しませんでした。ほかの競技から学ぶことも「プレイロール的発想」と言えそうです。

「写経でメンタル強化」という報道もありました。2011年の名古屋場所前には、「願意(がんい)」という最後に書く願い事に「感謝の心」と記したといいます。八百長問題で相撲界が大揺れだった当時、「相撲ができることに感謝してやっていきたい」と語りました。そういえば今場所でも、ご両親や奥様への感謝を何度も語っていたのが印象的です。

これはアンガーマネジメントの「ガーディアンエンジェル」というテクニックに通じるところがあります。前回の記事でも書きましたが、身近な人たちに「守られている」「応援してもらっている」というイメージを持つことは、孤立感やイライラを緩和することにつながるのです。

「土俵の上はすごく孤独。孤独にどうやって打ち勝つかという中で、気力面の充実(の要因)は奥さんの存在だった」とご本人が語っているように、少なからぬ成果を生んだのではないでしょうか。

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