台湾政界の風雲児「時代力量」トップを直撃 「民進党とはケースバイケースの関係に」

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最後は、国家の地位を決定する問題だ。現在の中華民国憲法増修条文第11条には、中華民国を自由地区(台湾)と大陸地区に区分するとされている。これはもともと、中国で選出された初代国民大会(中華民国憲法における最高機関であり、2005年に廃止された)代表が1991年につくったものだ。彼らは、「1国2区」への改正を宣言した。「万年議員」と呼ばれ、民意を反映しない形で選出された議員たちが改正したことは、現段階では民主主義の正当性を弱めている。

国際政治の現実からすれば、中華人民共和国は確かに存在する。しかし、現行憲法の条文は、台湾国民に「中華人民共和国は存在せず、中華民国大陸地区だけがある」と述べている。憲法の規定は現実から乖離した状況で、憲法の条文は無意味だ。このような憲法を台湾国民が尊敬し、またその重要性を考えられるだろうか。こんな現実に反している条文は、必ず修正しなければならない。

日本には国家・社会改革の情熱が薄い

――日本についてはどんな考えを持っていますか。

私は1年間、日本で生活したことがある。2000~2001年、米国の大学の博士課程にいるとき、論文を書くために東京大学で1年間研究した。当時は東京・吉祥寺(武蔵野市)の学生寮に住んだ。この時の経験は、私の人生に影響を与えた。

日本人はとても思いやりがあって、優しい。当時留学生だった私は懐が寂しく、いつも松屋で390円の牛丼とみそ汁を食べていた。日本の友人たちは、ほぼ弁護士や商社など大企業の法務部に在籍し、経済力がとてもあった。彼らは週末になると私に「同窓会をしよう」という名目で声をかけ、「ご飯を食べよう」と言う。「まだ勉強中の学生がカネを出す必要はない、社会人が出すものだ」という意味だったのだろう。同窓会というのは、留学生の私に経済的負担をかけさせないための言い訳だったと思うし、こんな行動は日本人が持つ優しさの一面だと思う。

ただ、日本には大きな“外患”がなく、経済力ではアジアでトップクラスに発展しているため、日本の若い世代が次に追求する目標、そして自分たちの社会と国家の関係が何なのかをわかっていないのではないか。日本の若者たちには、国家と社会を改革したいという情熱が現れていないのではと感じている。

学校で遅くまで研究して、地下鉄に乗って帰宅するたびに、電車の中は酒の臭いで充満していた。サラリーマンたちが帰宅する前に飲み屋に寄っていたようだった。私が見た日本のサラリーマンは搾取されている感じがして、幸せそうに見えなかった。東京は幸福な街なのか、あるいは東京に住んでいる人たちは幸福なのかと考えることがあった。

とはいえ、日本人の緻密さや労働への態度、日本の文官中心の体系、その専門性は、台湾がまだまだ学ぶべきものだと考えている。

楊虔豪 台湾人ジャーナリスト
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