1月16日に行われた台湾の総統選挙で民進党の蔡英文候補が圧勝した。同時に行われた立法院(議会)の選挙でも民進党が大差で国民党を圧倒し、議会の過半数の議席を得た。
この政権交代が日本を含む東アジアの外交に与える影響について分析していく。
今も昔も最大の難問は中国との関係
台湾の政治にとって最大の難問は中国との関係だ。民進党が2008年の総統選で国民党の馬英九に敗れたのは、前政権の未熟さ、陳水扁総統にまつわるスキャンダル、国民党の攻勢などもさることながら、民進党の政権が続けば中国との関係が悪化すると台湾の有権者が恐れたことが大きな原因だった。
それから8年を経て行われた今回の総統選では、蔡英文候補は台湾独立派だという攻撃を巧みにかいくぐった。
中国と台湾の間では「一つの中国」を認めるか否かの論争がある。いわゆる「九二共識」の解釈であり、中国は、台湾側も「一つの中国」の原則を認めたと主張するのに対し、台湾は、国民党が中国に近い姿勢、民進党が「九二共識」の解釈は中台それぞれにゆだねられている、との立場だ。
蔡英文はこの論争には深入りせず、中国との関係については「現状維持」を標榜した。「現状維持」とは何か不明だ、状況が変化していく中で「現状維持」はありえない、などと批判されても深入りせず、「現状維持」をお墨付きのように繰り返した。そして、そのような原則問題よりも、少しずつコンセンサスを積み重ねていく「民主的プロセス」を重視し、台湾人は「民主と自由を必要としている」と強調した。
蔡英文候補が賢明に立ち回ったこともさることながら、中台関係の変化も民進党勝利の大きな要因であった。
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