娘が4歳のとき、夫が急死し、それから10年余りは母を含めた3代の母子世帯でした。子どもが長じてから私は事実婚で再婚しましたが、長いこと母が家事を助けてくれました。
もともと専業主婦だった私が働き出したのは子どもが2歳のときです。新聞広告を見て学習研究社で保育雑誌の編集を始めました。保育所はまだ少なく、子どもを全面的に見てくれる母がいたからこそ私は働きに出られました。この再就職がなかったら、ものを書き、メディアで発言し、大学で教えるといったこともなく(当然に東京都知事選に出て落選するといったこともなく)、私の職業人生はずいぶん違ったものになったでしょう。
欧米でも注目されている「祖母力」
私の母は明治生まれの古い女でしたから、孫の世話をすることにほとんど不平を漏らすことはありませんでした。しかし、母子家庭の世帯主として一家を背負って働く私の子育てが、母への全面依存であることに変わりありません。母を育児に縛りつけ、人生のラストステージを孫育てで奪ってしまったという、後ろめたい気持ちがあります。
現代では、働く母親を支援する育児休業、保育所の増設など制度の拡充は進みました。しかし女性がフルタイムで正規雇用者として、仕事と子育てを両立するのはまだまだ困難です。
働く母親にとってなくてはならない祖母の力を、私は「祖母力」と名付けましたが、この祖母力が実は欧米でも注目されています。たとえば北欧ほど保育所が発達していないイギリス、アメリカ、ドイツ、スペイン、イタリアなどではその傾向が強いようです。離婚率の高い国ですから、離婚後の子どもの養育を引き受けて、家族崩壊を防ぐ砦になっているのです。
保育所の普及は母親たちへの就労支援になるだけでなく、祖母世代の就労とゆとりを提供することになります。現代の祖母は50歳代、60歳代、孫の世話のために仕事を中断したりあきらめたりするケースもあります。祖母力(もちろん祖父力もありますが)だけでなく、保育所力がまだまだ必要なのです。
ただし祖母の献身に甘えてはいけません。核家族で、祖母を当てにできないという人もいます。むしろ地域の祖父母世代が子育て支援をするという発想が必要になるでしょう。核家族が増える中、これからは社会的祖母力、社会的祖父力が発揮できるような受け皿をつくっていくべきです。
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