サハリン産の液化天然ガスが到着、商社がロシアに熱視線
プロジェクト着手から約20年、難産だったロシアの資源開発事業「サハリンII」で産出した液化天然ガス(LNG)が、6日、日本に到着した。
サハリンIIのLNGは2010年には年産960万トンのフル生産となり、そのうち6割弱が東京電力や東京ガスなど日本企業に供給される。これは日本のLNG総輸入量の約8%に相当する。
三井物産などがプロジェクトに着手したのは1980年代。92年には三菱商事も参画し、03年に本命のLNG計画が動き出した。だが環境問題などへの対応から生産開始は当初計画の07年から遅延。総事業費は1兆円から2兆円に増加した。07年にはロシアの大手ガスプロムが既存事業者の出資の半分を買う形でプロジェクトに割り込むなど、紆余曲折もあった。
三井物産と三菱商事にとって最大級の投資案件だっただけに、第1号タンカーの入港に関係者は胸をなで下ろしたはずだ。そして、一安心なのは需要家も同じである。
天然ガスは石油に比べて可採年数が長く、埋蔵地域は世界中に分散する。相対取引が中心で価格が安定しており、CO2排出量も少ない有力なエネルギー源である。国際的にはパイプラインによる輸送が主流だが、近隣に大規模ガス田がない日本は冷却して液化するLNG技術を先導。世界最大のLNG輸入国となった。
だが、需要国としての日本の地位は低下している。00年以降、欧米各国もLNG輸入を積極化。インドや中国も輸入を開始した。さらに最大の調達先だったインドネシアが天然ガスの産出量減少などを理由に、既存契約量を11年以降、現状の4分の1に削減すると決めている。カタールなど一部に強硬な値上げを求める動きもあり、新たな供給源の確保は課題だった。
石油天然ガス・金属鉱物資源機構の石井彰首席エコノミストは「供給源の多様化や距離の近さから、エネルギー安全保障上の意義がある」と評価する。
ロシア情勢に対する不安感も一部に残るが、距離が近く、資源埋蔵量が多いサハリンやシベリアは日本にとって重要性が高い。三井物産がシベリアでの石炭開発を検討しているように、ロシアの資源に対する商社の視線は熱い。サハリンIIを試金石に、商社のロシア進出が加速しそうだ。
(山田雄大 =週刊東洋経済)
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