日本の「難民制度」を歪めているのは誰なのか まるで被告人のように扱われる申請者

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神原弁護士は「『難民であること』の完全な証明が求められますが、非常に難しいです。一方で、国際基準では、難民認定機関の側にも責任があると考えられていますし、『どちらかわからない場合は難民認定する』というのが一般的です。こちらにあわせるべきでしょう」と述べた。

渡邉弁護士によれば、問題なのは、法務省入国管理局という行政庁にとどまらない。「司法府である裁判所の責任も大きい」と指摘する。

渡邉弁護士が所属する「在日ビルマ人難民申請弁護団」では、1990年代からビルマ(ミャンマー)出身者を支援してきた。20年以上の期間に延べ約600人が難民申請をして、約200人が認定を受けた。そのうち2割以上は、裁判を通して、難民不認定の処分が取り消されたケースだった。

専門性のある裁判官がほとんどいない

しかし、渡邉弁護士は「ミャンマーで迫害を受けた少数民族ロヒンギャの裁判では、いくつか負けています。『なぜ、ロヒンギャの裁判で負けないといけないのか』というのが、正直な気持ちです。彼らは国籍も認められず、人間としての尊厳を奪われています。最近では、ほとんどジェノサイドの様相を呈しているのに、保護しないというのは不思議でなりません」と話す。

裁判所は、難民問題について適切に判断できていない――。渡邉弁護士はそう考えている。背景には、難民について専門性のある裁判官が日本にほとんどいないことがあるという。世界の約60カ国から裁判官が集まり、難民認定の水準を統一していくことを目的としたネットワーク『難民法裁判官国際会議』に、これまで日本から正式参加した裁判官は一人もいないとされる。

「裁判所には異動の問題もあって、難民法の理解に関する蓄積がされていきません。結果として、世界から日本が取り残されています。信ぴょう性に関しては、行政よりも良い判断を下してくれますが、『迫害』の定義や『迫害のおそれ』の解釈など、やはり国際的に調和のある解釈適用がされているとはいい難い状況です」(渡邉弁護士)

渡邉弁護士はさらに、「国際基準から乖離(かいり)した判断をしても、自分たちの判断の見直しを迫られるプレッシャーがないこともあります。調和的な判断をしない結果として、難民に冷たい国を作り出していることに、司法も加担していることを認識して、裁判官にも難民問題に対して目を見開いてもらいたいと思います。そして、司法が変われば、ひいては行政判断にも大きく影響していきます」と付け加えていた。

(取材・構成/山下真史)

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