日本の「難民制度」を歪めているのは誰なのか まるで被告人のように扱われる申請者

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特に最近の難民申請者の急増は、国内で2010年から正規滞在者が難民申請すると、申請から6カ月たてば「就労」ができるようになったことが背景にあるのだ――法務省の入国管理局はそう主張する。

全国難民弁護団連絡会議で代表をつとめる渡邉彰悟弁護士も「本当は難民ではないのに、難民申請制度を利用して働こうとしている人たちがいる。そういう申請者がいることも否定はしません」と語る。

だが、「根本的な問題は、保護されるべき難民が適正に保護されていない現実です。『乱用』を強調するあまり、難民保護とは異なる動きにばかり目が向いてしまうことには賛同できません」と渡邉弁護士は言う。「本当の難民が、日本で働きたいと考えて、難民申請をすることには何の問題もありません。『難民性(=迫害のおそれ)』と『働くこと』は、決して矛盾するものではないのです」と強調する。

たとえば、技能実習生として日本に来て、難民認定や人道配慮による在留を認められた人もいるという。「迫害のおそれから逃れた後の生活を考えて、避難先の国を選ぶことは不自然なことではありません。『難民』をネガティブな存在ととらえたり、『乱用』を強調することで、適正な難民認定手続の実現に向けた動きが煮詰まらないようでは、日本の難民認定制度に横たわる問題の本質は覆い隠されたままです」

刑事事件の被告人のように扱われる申請者

渡邉弁護士は「何よりもまず、適正な難民認定基準の確立が必要です。そのことをあいまいにして、『乱用』問題を論じることは本末転倒で耐えがたいことです。適正な基準の確立は乱用防止の前提です。このことを忘れてはなりません」と語る。

国内で、2014年に難民認定を受けた人はたったの11人だった。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の資料などによると、米国の約2万1000人、ドイツの約1万1000人など、ほかの先進国に比べて、極めて少ない数字だ。

難民認定が少ない要因の一つとして、難民問題に取り組む弁護士たちが指摘するのが、政府が認定するかどうかを決める手続きの問題だ。

「入国管理局が難民申請した人に対しておこなうインタビューにも問題があります。申請者はまるで、刑事事件の被告人のように扱われています」。コンゴ人難民の代理人をつとめた神原元弁護士はこのように語るが、そもそも、難民申請者のインタビューはどのようにしておこなわれているのだろうか。

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