伊東信一郎・全日本空輸(ANA)社長--国際線が成長のカギ握る、アライアンスで路線拡充

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 そういう意味では脆弱ですよね。その点、韓国ソウルの仁川国際空港は機能もしっかりしており、国際線乗降客数で成田をしのいだんじゃないですか。どんどん日本を通り過ぎて向こうへ行っちゃう。空港は本当に大事ですよ。成田の2本目がもう少し長くなるとか、羽田の国際線の機能が充実するとか絶対必要です。

--今後の運航ネットワークはどう構築しますか。

国際線はポイント・ツー・ポイントで飛べばいいだけではなく、そこから先にどう飛ばすかということでスターアライアンスによるネットワークを充実させたい。直接飛ばすのはJALさんには及ばないから、ネットワークをカバーする意味で、われわれにとってアライアンスは重要な位置づけになります。日本はまだ顕在化していませんが、大西洋はスターアライアンスとワンワールド、スカイチームなど、アライアンスごとの勝負になっています。独禁法適用除外の中でダイヤ調整や運賃も認められています。ただ、太平洋はまだ日本と米国の独禁法除外がない。先を見ればありうると思います。

-- 一方、国内線は大規模な路線廃止と減便が続いています。

ベースは需要次第ですね。需要を上げるために努力をしなきゃいかん路線と、どうしても必要な生活路線については、地元の自治体などと協力しながらやる。ただ、少しチャレンジングなこともしました。北海道や石垣島に行くのを乗り継ぎでカバーし、運賃を工夫すれば、プレジャー系の需要を補えないかとやりましたが、大体うまくいっています。そういう成功事例と、全く儲からない路線を切るというのは狙いがちょっと違う。特に関西国際空港は正直言って厳しい路線が多いです。

--今年6月に開港する静岡空港は期待できるのでしょうか。

静岡はすごく期待していますよ。昔から静岡は人口が多いですし、民力が高いですからね。ANAには札幌とか沖縄といった観光路線が多いですから、需要もまず大丈夫じゃないですかね。

--国内についてはJR新幹線との競争が激しいですが、ライバルのJALと手を組んだ施策は考えられないでしょうか。

私が担当のころ、JALさんとシャトル運賃というのをつくったりしました。当時、ターミナルが一緒でしたからね。そういうことも可能性として考えられます。

--最近、JALとの国際線統合の構想が一部で浮上しました。

社内では笑い話ですよ。国民経済上も、あんまり真剣に考えた議論じゃないと思いますよ。国際線を持たず、国内線だけ残った航空会社はどうするのですかね。やっぱり航空会社って国際線を飛びたいと必ず思いますよね。われわれ、JALさんに追いつけ追い越せで来ているわけですから、自分の足でしっかり立って、来るべきビジネスチャンスにしっかり対応していくのが、今の私の責任だと思います。あんまり雑音には耳を貸したくないですね。

いとう・しんいちろう
1950年生まれ。宮崎県出身。74年九州大経済学部卒業、全日本空輸入社。人事部長、常務、専務、副社長などを経て2009年4月から現職。

(鈴木雅幸、冨岡耕 撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済)

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