伊東信一郎・全日本空輸(ANA)社長--国際線が成長のカギ握る、アライアンスで路線拡充
アジアナンバーワンを目標に掲げ、国際線拡充を成長の柱に据える全日本空輸(ANA)。成田、羽田の首都圏空港が再拡張される2010年をビジネスチャンスにとらえ、ホテル売却など本業への集中を加速してきた。だが、昨秋の金融危機以降、国際線の旅客数は2ケタ減と落ち込み、09年3月期は6期ぶりに最終赤字に転落する見通しだ。嵐の中、操縦桿(かん)を握ることになった伊東信一郎・新社長を直撃した。
--ANAをどういう会社にしたいと思われていますか。
アジアで一番の航空会社になることが目標です。品質、CS(顧客満足度)、価値創造でトップを目指したい。このことに社員全員が執着して頑張っています。私はその旗振り役。気が引き締まります。
--まず何から着手しますか。
09年をどう耐えて、10年以降の成長にいかに準備するのかという両面です。こういう時期だからこそ、原点である安全、品質向上、お客様満足度向上をしっかりやろうと思っています。それを支えているのが現場であり、危機意識を共有できるような取り組みを行っています。伝統的に「ダイレクトトーク」と称して、役員が直接現場に出向いて本音で話をする機会を設けています。
これはたとえば、安全事象が起きた後には、身の回りで安全に対する不安はないか、こうしたらもっと安全な体制がとれるのではないか、といった話が現場から出ます。その内容は戦略会議という役員会議で取りまとめ、いいものは即実行に向け動き出します。スピード感を持たせるためトップダウンで実行できないか等を、検討します。
--現場の意識改革は重要です。積極的な改善案が出てきますか。
社員による提案制度も時限的にやりました。1000件近く提案を受け、いろいろなアイデアが出ています。旅行商品だけではなく、組織のスリム化だとか、コスト削減だとか、思ったよりたくさんの提案があった。会社の改善点を真剣に考えてくれる社員がたくさんいるということは、うれしいですし心強い。その中には、一体感というか、一緒に乗り切っていこうという意思が感じられます。
--現下の経営環境をどのように分析していますか。
みんな悲観論で、日本中が沈みそうな勢いですが、そんなに暗いことばかり言っても仕方がない。希望半分ですが、下期のある時期からは回復基調だろうと期待しています。わずかですが、人が動き始めた。どん底だった貨物もちょっと首をもたげたという情報もあります。急にはいかんでしょうけれどもね……。