試練に直面する中国人民元 1914年のドル危機と比べてみる

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しかし、金本位制を廃止し中央銀行が整備されても、当時の米国のように外貨が調達できなくなって債務の返済が不能になるというリスクは残っている。中国の外貨準備は2014年6月には3兆9900億ドルに達していたが、2015年12月末には3兆3300億ドルにまで減少したことで、金融市場の不安は高まった。

1997年のアジア通貨危機の反省として、各国が事実上自国通貨価値をドルに対して固定していたことが原因の一つとしてあげられる。各国が為替レートをコントロールすることを諦めれば問題は生じないという意見もあるが、為替レートの大幅な変動による経済活動の混乱や信認の低下は避けられないだろう。

危機対応の出口を用意

1914年の米国は、ドルの信認を守るために建前上は金との交換性を維持しながら、株式市場を閉鎖してしまうなど、実際には保有している金の流出を抑えた。マカドゥー財務長官は、ポンド不足の抜本的な解決策として、大量の商船を調達して農産物を欧州に輸出することでポンドを入手することを考える。ドイツのUボートによる攻撃で商船の被害が大きかったことから、財務省に戦争危険保険局を設けて民間の輸出をサポートしようとした。

1ポンドが5ドルを超えるドル安となっていた為替レートは、1914年末には4.85ドル程度にまで上昇して、米国は金本位制を維持するという賭けに勝つ。ニューヨーク株式市場は再開されて、ドルは国際的な信認を得ることに成功した。マカドゥー財務長官の成功は、大胆な危機対応を行ったことだけでなく、出口戦略もちゃんと用意していたことが原因ではないだろうか。

シルバーは、1914年の通貨危機に際し、マカドゥー財務長官が民間金融機関の協力を得てうまく乗り切ったことで、ドルの国際的信認は著しく高まって、ポンドからドルへの基軸通貨の交代は加速したと評価している。中国が現在の金融市場の混乱をうまく処理できるかどうかは、人民元が主要国際通貨となるために、極めて重要なことである。

現在人民元が置かれている状況は、第一次世界大戦によって通貨危機に見舞われたドルと比べてどうだろうか。

第一次世界大戦が起こった時点では、既に米国経済が英国から世界一の座を奪ってからかなりの年月が経っていた。一方、現時点では中国の経済規模は米国の3分の2程度にとどまっている。これまでのような高い経済成長は無理でも、先進諸国の所得水準に追いつくまでは先進諸国に比べて高めの成長ができる可能性は高い。

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