電子マネーのエディ、9期連続赤字でいよいよ正念場
市場規模が1兆円突破目前にまで普及した電子マネー。だが、業界のパイオニア的存在でもある「Edy(エディ)」が苦境にあえいでいる。
エディを展開するビットワレットは、2009年3月期に50億円近くの最終赤字を計上する見通し。前期の赤字で自己資本が大きく毀損しており、今期の赤字に伴う債務超過転落を回避すべく、既存株主を引受先として50億円程度の増資を予定している。
実は、これで6回目の増資(下図参照)となる。当初に計画していた5年目の黒字化計画は達成できず、01年の会社設立からずっと赤字状態が続いている。
積極投資が裏目 拡大戦略の誤算
エディの直近の加盟店は12万店を超し、カード発行枚数も約4700万枚と業界トップ。しかし07年度の実績を見ると、手数料収入が主体の売り上げ41億円に対し、営業損益は50億円もの赤字だ。普及拡大のため端末投資を積極的に進めたものの、経費をカバーするだけの手数料収入が上がっていない。事業開始当初は、観光地や商店街での展開に動いた。「先行投資」と割り切ったうえで格安で端末をレンタルし、加盟店の拡大につなげた。しかし、肝心の決済金額が思うように増えなかったことが大きな誤算だった。同社の宮沢和正チーフ・ストラテジー・オフィサー(CSO)は「先駆者ゆえに試行錯誤し、初期投資が計画以上に膨らんでしまった」と振り返る。今でこそ端末は1台10万円以下だが、当時は30万円以上。積極投資の結果、端末の償却費用が重荷にもなった。
そもそも業界では「電子マネーだけで採算を考えてはいけない」というのが半ば常識。クレジットカードの手数料が決済金額の約5%なのに対し、少額決済中心の電子マネーは3%程度でしかない。
このため発行会社は、手数料以外の目的でも電子マネーを活用している。JR東日本の「Suica(スイカ)」の場合、元は改札機器の取り替えに合わせて「非接触型IC乗車券」として導入された。切符を機械の中に通す従来機は故障が多かったが、スイカを使う方式でそれも減り、メンテナンス費用の削減につながっているという。また、07年に「nanaco」を始めたセブン&アイ・ホールディングスは、利用者の購買履歴を分析し自社の商品戦略に利用。「WAON」を発行するイオンも、ポイントを発行し、拡販ツールとして使っている。