女性醸造家の渾身のワインに世界が驚嘆した 日本固有の甲州種で目指すワインの革新<上>

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中央葡萄酒の三澤彩奈さん
山梨県の韮崎駅からバスで20分。日本一の日照時間を誇る明野という地に、中央葡萄酒が運営する広大なブドウ畑広がる。そのうちの3分の1は、日本固有の甲州種ブドウの樹。このワイナリーには、アルコール分が低く、本格的ワインには向かないとされてきた甲州種ブドウを使い、世界屈指のコンクールで金賞を受賞した女性醸造家がいる。
三澤彩奈――フライングワインメーカーとして世界を巡った女性と、甲州種ブドウの物語。その前編。

 

2014年6月某日、中央葡萄酒グレイスワインのeメールアドレスに、一通のメールが届いていた。広報の担当者は、イギリスから送られてきたそのメールを一読して、慌てて三澤彩奈に電話をした。

2008年、27歳のときから父親が四代目を務める中央葡萄酒グレイスワインで醸造責任者を務めている彩奈は、広報からハイテンションの電話を受けて、まさか!という驚きのあと、込み上げてくる喜びとともに深い安堵を覚えていた。

世界最大級のコンクールで金賞を受賞

世界約90カ国で発売されているイギリスのワイン雑誌『デキャンタ』。この雑誌が主催する世界最大級のワインコンクール「デキャンタ・ワールド・ワイン・アワード」は、最も金賞を取ることが難しい世界的アワードのひとつで、信頼度の高さでも知られる。

2014年、世界各国から1万5007銘柄が出品されたこの大会で、彩奈が醸造した白ワイン「キュヴェ三澤 明野甲州2013」が日本のワインとして初めて金賞を受賞したのだ。金賞を得たのは158銘柄で、全体のわずか1%という狭き門。同時に、アジア地域の最高賞「リージョナルトロフィー」も獲得した。

イギリスからのメールは、この栄誉ある受賞の知らせだった。

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