日本は、禅寺の中にアッラーに祈る場を作る 世界の宗教問題を解決する鍵とは?

拡大
縮小
日本に住むイスラム教徒は約11万人におよぶ(写真:wonderland/PIXTA)
日本に住むイスラム教徒は約11万人。中には日本で生まれ日本で育ってイスラム教徒になった人もいる。2001年の9.11テロ以来、14年近く、彼ら彼女らの生活と信仰を追い続けていたジャーナリストの佐藤兼永さんが『日本の中でイスラム教を信じる』を上梓した。ローマ法王やチベット法王にも会って、京都から世界の宗教問題を解決する方法を発信しつづける禅寺の副住職である松山氏が、本書の意味を読み解く。

 

私は京都の禅寺の長男として生まれたのですが、中学・高校は地元のカトリックの学校に通いました。お寺の子どもが、キリスト教の教育を受ける。大学時代にアイルランドを旅行し、日本の民宿にあたるB&Bに泊まったときに、そこのおかみさんにこの話をしたところ、「あなたはこの国だったら殺されても文句を言えない」と言われました。

アイルランドは敬虔なカトリックの国です。若かった私はそのとき、何も反論をすることができませんでした。しかし今であれば、自信を持ってこう言えます。日本における宗教のありかたこそ、世界の宗教問題を解決する鍵になるのではないか、と。

「イスラム教徒は冥福を祈れない」

日本で学び、働き、生きる、11万人のイスラム教徒。彼らはこの国で、イスラム教とどう向き合い、どう実践しているのか。画像をクリックするとアマゾンのサイトへ移動します。

本書『日本の中でイスラム教を信じる』(文藝春秋)は、この14年近くの、日本社会のイスラム教の受容を描いたルポです。2001年の9.11テロのときに厳しい偏見にさらされたイスラム教徒たちをきっかけに、著者の佐藤さんは、じっくりと日本にいるイスラム教徒たちと付き合っていました。紹介されるのは、海外から日本に来たイスラム教徒だけではなく、日本人としてイスラム教徒になった人たちもいます。そして、このルポがすぐれているのは、日本社会と、イスラム教徒がどのように衝突し、そして折り合ってきたのかを、実名の証言を基に具体的に描いている点なのです。

私が読んでいて面白いと思ったのは、日本の仏式の葬儀にイスラム教を信じている方々がどう対応してきたかを書いた第3章「イスラム教徒は冥福を祈れない」です。

次ページアッラー以外に対して祈ることはできない
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
TSMC、NVIDIAの追い風受ける日本企業と国策ラピダスの行方
TSMC、NVIDIAの追い風受ける日本企業と国策ラピダスの行方
【動物研究家】パンク町田に密着し、知られざる一面に迫る
【動物研究家】パンク町田に密着し、知られざる一面に迫る
広告収入減に株主の圧力増大、テレビ局が直面する生存競争
広告収入減に株主の圧力増大、テレビ局が直面する生存競争
現実味が増す「トランプ再選」、政策や外交に起こりうる変化
現実味が増す「トランプ再選」、政策や外交に起こりうる変化
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT