的確な台湾の選挙分析から「選挙の神様」と呼ばれる日本人の学者がいる。彼はもともと台湾と縁もゆかりもないイギリス政治思想の研究者だった。
台湾社会は選挙で回っている
――正確な選挙予測で注目されていますが、いつから予測を始めたのでしょうか。
実は2000年の総統選挙から始めています(笑)。大雑把でしたが、各候補の県市別の得票予測を積み上げる方式で陳水扁氏の当選を予想しました。当時は限られた研究者同士で共有しただけで、特にメディアで注目されるものでもありませんでした。
――一般的に学者は選挙結果を分析しますが、予想して当てにいこうとしないと思います。
私ももちろん結果の分析が基本です。ただ、台湾は政治だけじゃなくて社会自体が選挙で回っています。人々の日常会話で誰が何万票差で勝った負けたという話が普通に出てきます。その時々の政治情勢が常に数値化されて、何かが起きると次の選挙でどの政党の得票率が何%上がるか下がるかを意識して議論します。それくらい選挙がしみ込んだ社会です。
これを見ていて、台湾の現状分析が正確にできていれば選挙結果が出る前に数値化できるはずだと考え、予想にこだわるようになりました。
――どのように予想しているのですか
台湾の人々の政治感覚をつかむことと徹底したデータ分析の組み合わせです。台湾の選挙は2大政党の岩盤支持票と浮動票が混じりあっています。過去の選挙データを各県市の投票所レベルまで掘り下げて分析することで、ミクロとマクロの投票傾向が把握できます。1996年以降のすべての選挙データが自分のエクセルで整理されていることが重要です。
そして、どういう人がどの党に入れているのかという分類が必要です。これは長年さまざまな立場の人たちの話を聞いてきた成果で、これで台湾のイデオロギー分布図と政党支持の関連図ができます。選挙をする候補者陣営の側と票を入れる一般有権者の側の動きを観察していき、今回の選挙では得票が何パーセントの増減になるのかをエクセルに落とし込んでいきます。
ただし、このままでは、自分の思い込みで予想がずれる可能性があります。しかし、2012年に総統選挙と立法委員選挙の2つの選挙が同日選挙となったことで、精度を高める予測モデルができました。
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