日本は、禅寺の中にアッラーに祈る場を作る

世界の宗教問題を解決する鍵とは?

それ以来、食品の中にアルコールを入れたものは出さなくなりましたし、偶像崇拝が禁止されているイスラム教徒の方をご案内するときには、御本尊様に向かって手を合わせることやお参りすることも勧めなくなりました。また、イスラム教徒の方からのリクエストがあれば、寺の一室を礼拝のために提供します。その際は、部屋に方位磁石を置いてメッカの方向がすぐにわかるようにしています。

本書では、日本の企業や学校が、イスラム教徒の方々の礼拝のために、会議室や校長室を使ってもらっている話が出てきますが、私のお寺でもそうしているのです。

イスラム教と「共生」するようになった日本社会

著者の佐藤さんは、9.11の際の日本社会のイスラム教に対する拒否反応を見て、取材を始めました。しかし、この10年以上の間に、日本社会は想像以上にたくましく、そして柔軟に、イスラム教と「共生」するようになったのだということを、佐藤さんは実感していきます。

2015年のはじめには、IS(イスラム国)による、邦人殺害事件がありました。しかし、反イスラムデモが起きたヨーロッパとは違い、日本ではイスラモフォビアと呼ばれる、イスラム教を嫌悪する動きはほとんど広まりませんでした。それどころか事件以降、「イスラム教を知りたい」という若者を中心に、全国のモスクに一般の見学者が増えていると本書は伝えます。

そのくだりを書いた最終章を読みながら、私は「日本が世界の宗教問題を解決する鍵になるのだ」という自分の信念と活動は間違っていないと、より確信を深めました。

もちろんそれぞれの宗教の教義に忠実であることは大切なことです。しかし、それ以上に大切なのは、たとえ違う価値観であっても、まず理解しようとし、尊敬をもって接することです。この本には、日本社会とイスラム教のこの14年近くのその歩みが描かれているのです。

兵庫県の尼崎市で、私は今、こんなラジオの番組にかかわっています。その名も、「8時だヨ! 神さま仏さま」。これはリスナーからのお悩みを、神社の神主さん、仏教のお坊さん、キリスト教の牧師さんが一緒になって解決する、という番組です。ひとつの悩みに対して、3人がそれぞれの宗教の立場から、それぞれの回答を寄せていくのです。

この本を読みながら、そうか、レギュラーメンバーのなかにイスラム教のイマーム(指導者)の方が入ってくれたら、これまでにない「お悩み解決案」が出てきて、この番組ももっと面白くなるかもしれない、そんなことを考えたのです。

(以下はTEDxKyotoで行った筆者のプレゼンテーション)

 

 

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