ベンチャーの要諦、「CFO」たちの知られざる素顔

「外銀エリート」がこぞって参戦する背景事情

一貫してベンチャーの管理畑を歩む“たたき上げ”型のCFOも存在する。『週刊東洋経済』の「すごいベンチャー100 2020年最新版」でも取り上げたLeapMind(リープマインド)の佐々木翔平CFOはその最たる例だ。大学3年次から当時株式上場間もなかったアエリアの管理部門にインターン生として在籍。連結決算の作成や監査法人とのやり取りまで手がけ、新卒で入社後も同部門で活躍した。

その後は「別の組織でも自分の経験を生かしたい」との思いからフィールドを変え、2011年にクラウドワークスを共同創業。CFOとして東証マザーズへの上場も主導した。さらに「次はテクノロジーとしての難易度がより高いベンチャーでチャレンジしたい」との考えを強くし、2018年からリープマインドに参画している。

リープマインドの佐々木翔平CFO(左)と松田総一CEO(右)(写真:リープマインド)

実際、CFOとして働くうえでも“難易度”の高さを実感しているという。リープマインドは自動車や家電製品などの端末に、ディープラーニングを超低消費電力で行えるAIの技術開発を行っている。「導入先や売上高がコンスタントに積み上がるわけではない一方で、開発にはまとまった資金がいる業態。投資家に成長の蓋然性をプレゼンするのが難しく、会社をもたせるための資金余力を考え、ひやひやするタイミングもあった」。

難しい局面にどう対処したのか。佐々木氏は「技術的な強みをきちんと理解してもらえるよう説明するだけでなく、出資に興味を持ってもらえそうな事業会社に対しては、一緒にどういう取り組みができそうか、具体的なプランに落とし込むまで中の人と議論を行っていった」。こうした取り組みの結果として、2019年10月にはトヨタ自動車や三井物産など4社からの約35億円の資金調達を実現した。

「知の共有」が業界の課題

人材の厚みが増し、各社各様の存在感を発揮しているベンチャーCFOだが、業界全体を見渡すと「ナレッジの共有」が進んでいないという課題も浮かぶ。

前出の「Growth CFO Summit」のようなイベントも開催されてはいるが、CEOやCTO(技術や開発の責任者)向けのイベントに比べると機会は圧倒的に少ない。「CFOは創業メンバーでなかったり、シャイで裏方気質だったりという人が多いのも関係しているのかもしれない」(ヤプリの角田CFO)。

一方で、CFO同士が横の連携を深める意味は小さくなさそうだ。「どのベンチャーキャピタル・事業会社からどういう形で資金調達を行うかなどをめぐっては、創業間もない時期だとしても後戻りできない判断ミスが起こりうる。事前に知識があれば防げるかもしれない。(個性や熱意も重要である)創業者は、ある意味、再現性の点は難しいが、CFOには共通化できる課題やノウハウが多いと感じる」(リープマインドの佐々木CFO)。

日本におけるベンチャーエコシステムのさらなる拡大には、こうした“陰の立役者”のレベルアップも不可欠だろう。

『週刊東洋経済』8月22日号(8月17日発売)の特集は「すごいベンチャー100 2020年最新版」です。
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