ベンチャーの要諦、「CFO」たちの知られざる素顔

「外銀エリート」がこぞって参戦する背景事情

今年の「Growth CFO Summit」はオンライン形式で開催(写真:グロース・キャピタル)

7月にオンラインで開催されたCFO向けイベント「Growth CFO Summit」には、約600人のCFO(それに順ずる役職者等を含む)が登録・参加。半日にわたり、「研究開発型ベンチャーのファイナンス戦略」「機関投資家と発行体のあるべきコミュニケーション」といったディープなテーマのパネルディスカッションに耳を傾けた。

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参加者はおおよそ3分の1が上場企業、残りが未上場ベンチャーの在籍者で、会場の制約がなくなったこともあり昨年から大幅に増えた。イベントは今年で6回目。主催するグロース・キャピタルの嶺井政人CEOは「上場・未上場にかかわらずCFO人材の厚みが増してきたことで、非常に高度な議論ができるようになってきた」と話す。

とくにここ数年は、外資系の証券会社や投資銀行の出身者がベンチャーに参画する動きが加速している。嶺井氏もモルガン・スタンレー証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)の出身で、スマホゲーム関連企業のマイネットに転職しCFO・副社長を務めた人物。そのほか、メルペイの青柳直樹CEO(ドイツ証券出身、グリーでCFOを経験)、マネーフォワードの金坂直哉CFO(ゴールドマンサックス証券出身、現在はマネーフォワード傘下のベンチャー支援企業でCEOを兼務)なども先駆け的な存在だ。

こうした上場メガベンチャーにおけるCFOの幅広い活躍は、外銀出身者の未上場ベンチャーへの参画を後押ししている。「リーマンショック以降は外銀の給与水準が以前ほど高くなく、働き続ける魅力が下がったことも関係しているだろう」(嶺井氏)。ファイナンス戦略のブラッシュアップを図りたいベンチャー企業と、新しい活躍の場を求める外銀人材。両者のニーズがマッチする形で人材流入が進んでいるわけだ。

CEOの「精神的負担」を減らす役割

ここからはもう少し、個々人の働きや素顔に迫りたい。プログラミング不要のアプリ開発ツールを手がけるヤプリ。ここでCFOを務めるのは、クレディ・スイス証券出身の角田耕一氏だ。「もともと大企業よりベンチャーのような柔軟性の高い組織のほうが肌に合っていると思っていた」といい、クレディ・スイス入社から数年でベンチャーに転職した。そこでのCFO経験を経て、2017年にヤプリに参画、現在に至る。

ヤプリの角田耕一CFO(写真:ヤプリ)

会社の成長とともに、仕事の内容は目まぐるしく変化していったという。当初は財務に関わる部分のみならず、経営企画や採用・人事、管理全般と、自ら手足を動かす形で広範な業務を担当した。そこから組織の拡大に合わせそれぞれの担当部署を整備した結果、徐々に角田氏の手を離れ、現在の役割は会社全体を数字面から分析し意思決定に携わる、経営のコアな部分に収束している。

もう1つの重要任務は、国内外の投資家とのコミュニケーションだ。「1年間に数十から100回のミーティングをこなしている。庵原(保文CEO)も同席するが、気づくといつも9割以上の時間、自分がしゃべっている」と角田氏。事業戦略や成長性を投資家に理解してもらうのに、金融視点での勘所を押さえる角田氏の能力が発揮されているようだ。

ベンチャーCFOの本質的な役割について、角田氏は「CEOの精神的負担を分担することではないか」と語る。「ベンチャーはヒト・モノ・カネに関連するハードシングス(危機)を日々経験する。そんなときに『ここは僕が』と対応を引き受けるメンバーがいることで、トップはサービス作りや顧客との向き合いに専念できる」。

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