学童保育「全国で雇い止め」が多発する根本原因 現場からパージされるベテラン指導員の悲鳴
「早く子どもたちの元へ戻してほしい」
大阪府守口市の学童保育で働いていた30〜50代の指導員10人はこの夏、裁判にのぞんでいる。
今年はコロナ禍でずれこんでいる夏休みだが例年、その準備は2ヵ月前から始まる。子どもたちの思いを聞きながら、放課後だけではできない経験ができるようプログラムを組み立てていく。
直前ともなれば、わくわくするような冒険のストーリーを語ったり、仕掛けをつくり、子どもたちのなかの意欲や興味をかきたてていく。通常の保育をしながらの準備は忙しくも楽しい時間だった。しかし10人は、子どもたちの前ではなく、法廷に立っていた。
雇い止めの理由は「反抗的だった」から
同市では2019年度から、公営だった学童保育事業を民間企業に委託。市の非正規職員として働いていた指導員は、委託先の共立メンテナンスと雇用契約を結んだ。
しかし今年3月末、コロナ禍での臨時休校中、大量の雇い止めが行われた。その理由は、「会社に反抗的だった」など。雇い止めは無効だとして、労働者としての地位の確認等を求めて5月、集団で提訴した。
第1回口頭弁論で原告の1人、水野直美さんは述べた。
「守口市の学童保育の内容を継続すること、そして指導員も継続して雇用することを表明し、守口市からそのことが評価されて受託業者に選択された」「雇用される際の共立メンテナンスの説明でも、よほどのことがなければ契約は更新されるとか、65歳を過ぎても働けると言われた」
指導員10人は雇い止めされるような「よほどのこと」をしたのか。10人は短い人でも8年、最長の人で37年の経験を持つ。
厚生労働省は2015年、学童保育運営の「従うべき基準」を施行。「放課後児童支援員」という公的な資格が設けられ、都道府県単位で資格研修を行っている。水野さんを含む3人はその講師を務めてきた。次世代の人材養成を託されるベテラン指導員である。3人の研修を受けたことのある大阪府内の指導員らは、「実践的な内容で役に立った」「あんなに経験がある人たちが雇い止めとは、あってはならないこと」と口をそろえる。
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