学童保育「全国で雇い止め」が多発する根本原因 現場からパージされるベテラン指導員の悲鳴
東北地方の学童指導員Aさんの市でも、今年度から民間委託されることに。昨秋、委託会社の面接を受けたが、不採用だった。指導員歴は12年あり、同僚や保護者からも信頼される存在だった。
「子どもたちと話し合いながらルール作りをしたり、子どもたちがしたいという季節の行事やおたのしみ会などを指導員の負担にならないように続けてきました。特別なことをしてきたつもりはないですが、市内の他の施設からは『やりすぎじゃないか。他と足並みをそろえて』と言われたことがありました。
昨年12月に採用されないとわかり愕然として、今までやってきた保育を否定されたのだと思いました。『働き続けられるよう署名活動をしようか』と言ってくれる保護者もいましたが、その保護者が通わせづらくなっても申し訳ないので断りました」
Aさんは4月からは隣市の学童で働いている。採用通知を受け取った同僚も「Aさんを雇わないような施設では働けない」と辞めた。
「ハイと言う人以外は要らないのだ」
首都圏の学童で働く指導員歴15年のBさんは、12年目に保護者会運営から民間委託への移行を経験した。市担当者は学童保育への理解が深く、民間委託しても大きく変わることはないと信じていた。
ところが、またたく間に、「したい保育」がしにくい環境に。市の担当課からも保護者からも「辞めないで」と言われ、1年半働き続けた。しかし、委託先は複数市で学童事業を請け負っており、別の市への異動を命じられたのを機に辞めた。
「会社からは意見をするなと言われ、ハイと言う人以外は要らないのだと感じました。こんなはずじゃなかったというのは、保護者や指導員だけではなく、市担当課も感じているのではないかと思います」
Bさんは市の設置した子育て会議のメンバーでもあり、学童内外で認められた人材だった。現在は生まれ育った市を離れ、NPO運営の施設で働いている。
民間企業ではないものの、委託先から雇い止めにあった指導員もいる。千葉県四街道市社会福祉協議会が運営する学童で働いていた30代の男性は3月末、別の施設への異動を命じられた。
異動を拒否した男性は、そのまま雇用契約が切れた状態に。千葉労働局は「不当な雇い止めである」と指摘し、男性は復職に向けて社協と協議を続けていた。あと少しで和解成立という段階まで来た5月末、男性を中傷する匿名の投書があった。和解交渉は一方的に中断され、社協による調査が始まった。
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