さて、政府にはどんな手があるか。
昨年一昨年は、公的年金の株式爆買いが話題になった。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)をはじめとする公的年金は、今年も大量に株式を買うだろうか。個人的見解だが、筆者は「それほど買わないのではないか」と見ている。
GPIFはチャイナショックで株価が下がっていた昨年9月末時点で「国内株式」を21.35%持っていた。その後株価が回復したので、現時点では「基本ポートフォリオ」の25%に1~2%足りない程度の組み入れ率になっているのではないかと推測される。
厚労大臣が与えている運用目標
GPIFの基本ポートフォリオでは許容乖離幅を10%認めており、政府としてはこの枠も使って株式を買ってほしいところだろうが、仮に筆者が運用責任者ならば「まったく気が進まない」。それは、基本ポートフォリオよりも少し小さい組み入れ率がもっとも「居心地が良い」からだ。なぜか?
運用管理の本来の考え方から言うと、運用パフォーマンスは基本ポートフォリオから計算される「複合ベンチマークのパフォーマンス」と比較されるのがフェアであり正しいのだが、昨年7ー9月期の7兆8000億円の運用損への報道に見るごとく、日本のアホ・メディア(言葉が過ぎるが、あえて「アホ」と言いたい)は、損の絶対額にだけ過剰反応した。
一方、厚労大臣が長期的に与えている運用目標は「名目賃金上昇率プラス1.7%」である。これは率直にいって、相場環境さえフォローなら、基本ポートフォリオのような(内外株式25%ずつに外国債券15%の計65%のリスク資産)巨大リスクを取らなくても十分達成出来そうに思える。
つまり、「24%」にとどまっていれば、相場が悪かった場合には「基本ポートフォリオよりもアンダーウェイトだった」というプロの言い訳が出来るし、相場がよかった時には「大いに儲けたし、厚労大臣が与えた運用目標をクリアしている」と言える。GPIFがどう考えているかはまったく知らないが、よほどの事情か強力な強気の相場観が無ければ、25%を大きく超えて買う気は起きないはずだ。
日銀の3兆3000億円も「準爆買い」と言えるくらいのレベルだが(取引日を250日としても、毎日100億円以上買う計算)、彼らには相場的なメリハリというものがないので、市場参加者にとってはおおむね織り込み済みで、急場の役には立たないと見るべきだろう。
国債の買い入れを増やすような純然たる金融緩和は、円安等を通じて株価にもプラスに働くかも知れないが、これも即効性が乏しい。法人税率引き下げは、理論的には株価に即効性があるはずだし、大幅に行えばインパクトもあるはずだ。しかし、税制の話なので政治的に決まる面があり、物事が進行するテンポが遅い。
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