完全雇用なのにGDPが伸びないのはなぜ? 日本型雇用の変革がカギを握る

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こうした現状を総括すると、「正規雇用で採用できるならば採用したいが、それ相応の人材を見つけるのが困難なので非正規雇用で対応している」というのが実態であり、少なくとも非正規雇用を強いられるという意味での「かわいそうな若年層」という状況は確実に変わりつつある。以上のような状況を踏まえれば、当然、賃金の上昇が期待されよう。実際、『毎月勤労統計調査』(厚生労働省)では2014年以降、前年同月比で見た増勢が目立つようになっており、減少が当たり前だった時代は変わりつつある様子がうかがえる。

実態を分析すれば賃金は着実に強含みに

とはいえ、現金給与総額は現在雇用されている就業者(正規雇用も非正規雇用も含め)1人当たりの「月給」であり、新規に雇用される層が短時間労働者主体であれば、月給の伸びは抑制される。そこで「月給」ではなく「時給」で見ると、最近の雇用市場における需給ひっ迫と平仄が合う動きが確認できる。リクルートジョブズが公表する『アルバイト・パート募集時平均時給調査』によれば、三大都市圏(首都圏・東海・関西)の2015年11月平均時給は前年同月差プラス19円の981円となっており、過去最高を6カ月連続で更新している。

また、「雇用者数×1人当たりの賃金」で算出される名目雇用者報酬には、同期間に新しく雇用された層の給与の増加分が反映される。2014年1~3月期から足元(2015年7~9月期)の名目雇用者報酬の伸び率はプラス15%となっている。

名目雇用者報酬を実質GDPで割ったものが「単位労働コスト(ULC)」であり、付加価値一単位を生み出すためにかかるコストを表す。ULCの同期間の伸び率はプラス18%弱と、やはり相応の強含みを確認できる。より正確にはULCは「名目雇用者報酬÷実質GDP=(名目雇用者報酬÷労働投入量)÷(実質GDP÷労働投入量)」として計算される。名目雇用者報酬が伸びている一方、労働生産性(=実質GDP÷労働投入量)が伸びていないことがULCの上振れに直結していることが見えてくる。

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