完全雇用なのにGDPが伸びないのはなぜ? 日本型雇用の変革がカギを握る

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男性就業者の減少については、少子高齢化の結果として、団塊世代の退職が相次いでいるうえ若年労働者(学生を除く15~24歳)が縮小する状況が定着し、生産年齢人口(15~64歳)の就業者は過去十数年趨勢的に低下しているため、違和感はない。むしろ、その減少ペースが抑制され始めていることは注目される。これは同期間に生産年齢人口の男性就業者は45万人減っているのに対し、65歳以上の男性就業者が38万人増えているためだ。定年後に再雇用された層が多いものと思われる。

女性就業者に関しては、生産年齢人口で27万人増加している。少子化の影響で15~34歳は10万人減少したものの、45~54歳が24万人、35~44歳と55~64歳で7万人ずつの増加したためだ。65歳以上についても26万人増加して、全体としては50万人を超す増加となった。出産・育児を経て雇用市場へ復帰した層が全体をけん引していると推測される。

同期間の雇用者(自営業者などを含まない就業者より狭い概念)の増加幅が35万人と最も多い45~54歳に関し、「年齢階級・雇用形態別」を見ると、うち正規が15万人、非正規が21万人(うちパート・アルバイトが15万人)の増加といった構成となっている。社員の正規化が潮流になりつつあるものの、やはり非正規、その中でもパート・アルバイトは多数派である。45~54歳の年齢層における女性の非正規比率は2012年以降上昇傾向にある。

「かわいそうな若年層」はもういない

なぜ、人手不足にもかかわらず、企業はフルタイムで労働可能な正規雇用ではなく短時間労働の非正規雇用ばかり増やすのか。背景には企業側は処遇をよくして正規雇用での採用を増やしたいと考えているにもかかわらず、正規雇用が可能な若年層が枯渇しているという現実があるためだと思われる。

メディアでは、非正規比率が4割に到達している事実が悲観的に報じられるが 、「企業がコストの高い正規雇用を忌避して、非正規雇用を増やしている」という昔馴染みの論点で見てはならない。

2006年前後をピークとして、15~24歳(在学中を除く)の若年層を対象とする非正規比率は低下傾向にあるし、そもそも全体で見ても正規雇用者数は2014年初頭に底を打って反転している。非正規雇用の増加幅に及ばないにしても正規雇用も相応に増加しているということだ。実際、「非正規雇用の正規化」は頻繁に報じられるようになった。

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