新日本監査法人は旧中央青山の教訓を生かせ 奥山章雄・中央青山監査法人元理事長に聞く

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新日本監査法人が入居する都内のビル。現在に至るまで、何が問題であったか、公に語っていない(撮影:尾形文繁)

監査は毎年同じことを、ルーティンのように繰り返している。そうでなければ監査法人内で、報告を出す期日に間に合わない。問題の有無は内部統制に依拠している。こうした状況下、(粉飾決算のような)問題を発見することは、よほどイレギュラーな取引がない限り、難しい。

コスト的には全然見合わないが、何年かに1度、監査人が発生から集計まで、すべての原価計算を追いかける必要があるのではないか。

中央青山から新日本へは1000人以上が転籍

おくやま・あきお●1944年生まれ、1968年に中央会計事務所入所。1983年同代表社員。2001年から2004年にかけて日本公認会計士協会の会長。2005年に中央青山監査法人の理事長就任、翌年の業務停止命令を受けて辞任。現在は公認会計士奥山章雄事務所の所長ほか、日本製粉の社外監査役などを務める(撮影:梅谷秀司)

ーー中央青山の教訓は新日本に生かされていると感じるか?

当時、一番ひどいと思ったのは2006年5月に、同年7月〜9月までの業務停止命令が発表されたことだ。3月期決算の会社は6月に株主総会を開催する。会社としては問題なく株主総会を乗り切ろうと思っているのに、業務停止になった監査会社として再任することができるか。

しかも当時の商法上のルールでは、業務停止期間が2か月以上になると、一時監査人を選任しなければ、継続監査とはいえないということだった。あの時、腹立たしく思っていた会社が大部分だったはず。中央青山を選んでくれた会社もあったが。そうではない会社も多かった。

今回、金融庁の処分が決まったことで、新日本は問題点がなかったか、精査すべき。特に監査法人として、東芝のここは把握できなかったが今後はこうした対応をする、という問題点と、改善策の徹底的な「見える化」をすべきだ。

12月期や3月期を本決算とする企業は多い。私が監査役を務める会社でも、新日本を監査法人として使っているが、何が問題か分からないままでは、監査法人の選任を株主総会に諮れない。問題と対応策が明確になれば、「改善するなら協力します」という判断になる。

新日本には中央青山から1000人以上が転籍した。私の改革が浸透したかわからないが、対応策は伝わっているだろう。直っていないところがあれば改善してほしい。

「週刊東洋経済」2015年12月26日-1月2日号<12月21日発売>核心リポート01に加筆)

 

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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