東芝、初の原発輸出が今も「塩漬け」だった 米国でWH以外にも厳しい案件が残っている

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11月27日、原発事業について説明する東芝経営陣。一番右が東芝の室町社長、一番左がWHのロデリック社長

東芝初の原発輸出が、受注から6年経った今も建設が行われず、損失を出し続けている。この案件だけで2013年度310億円、2014年度410億円の合計約720億円の減損損失を計上。2006年に買収した、米原子力会社ウエスチングハウス(WH)社ののれん代(約3441億円)の減損が唯一の懸念材料と思われていたが、東芝自身の原子力事業も暗雲が漂っている。

720億円もの減損損失を計上したのは、米テキサス州マタゴルダ郡でABWR(改良型沸騰水型原子炉)を2基建設する「サウス・テキサス・プロジェクト(STP)」だ。東芝は2009年2月、プラントの設計、調達、建設を一括受注。これを足がかりとして、原発輸出の加速を目指していた。当初の計画では、2012年に建設運転許可(COL)が下り、2016年~2017年に運転を開始するはずだった。

ところが、2011年3月の東京電力・福島原発事故を受けて、米原子力規制委員会(NRC)が、稼働中の全原発について安全性確認の実施を決定。東芝とともに計画を進めていた、独立系発電会社で米電力大手のNRG社は、新規原発建設の認可獲得に時間とコストがかかることを懸念し、2011年4月に追加の投資中止を決定。早々とSTPに見切りを付けた。

代わりの出資者が見つからない

STPは東芝とNRGの合弁会社が担当(当初の持分比率は、NRG88%・東芝12%)。NRGは2011年1月~3月期決算で、4.81億ドル(当時約400億円)の特別損失の計上を決定、うち1.5億ドル(当時約120億円)が東芝の負担だ。本来であれば、東芝も2011年度に減損すべきだったが、「新たな提携先と交渉中で、減損の必要はない」とし、損失を計上してこなかった。2013年度になり、急に減損したことを考えると、監査法人から迫られたことは想像に難くない。

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