東芝、初の原発輸出が今も「塩漬け」だった 米国でWH以外にも厳しい案件が残っている

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NRGが想定した通り、STPのCOL審査は長引き、2016年1月に建設許可が下りる見通しだ。東芝の志賀重範副社長は、「全ての審査が終了している」と説明するものの、肝心の出資者が見つかっていない。米国では外資100%出資の建設には制限があるため、東芝はNRGに代わるパートナーを、必ず見つけなければならない。

とはいえ、NRGに続く出資者が4年も出てこないのは、福島原発事故の影響だけでない。STPの建設を計画しているテキサス州は、天然ガスが採掘できるため、原発のコスト優位性が低下しているのも一因だ。

例えば三菱重工業も同じテキサス州で、2009年から別の原発建設に関わっていたが、2013年にCOL申請を中断。「米国市場での(原発に対する)減速などもあり、現地の電力会社が総合的に判断した」(三菱重工)と見切りをつけたのである。海外原発に詳しい研究者も、「天然ガスが多く採掘できるテキサス州で、原発は採算に合わないと判断したようだ」との見解を示す。

今後15年で64基受注という計画は楽観的過ぎる

事業説明会後、記者団に取り囲まれる室町社長

出資者が見つからず、費用だけがかさむ状況下でも、東芝は「1月に建設許可が下りれば、建設の可能性を追求していく」(志賀副社長)と強気の姿勢は崩さない。東芝初の原発海外輸出だけに、諦めるわけにはいかないのだろう。

11月27日に開かれた原子力事業説明会でも、東芝はアグレッシブな計画をぶち上げた。WHを含めた東芝全体の原子力事業で、2017年度に売上高6400億円(2014年度6178億円)、営業利益500億円(同29億円損失)、今後15年間で64基の建設をするというものだ。

現在、WHが中国と米国で各4基の計8基を建設中だが、これらの案件は福島原発事故以前の2007年~2008年に受注したもので、事故後に建設を開始できた原発は一つもない。それどころか世界を見渡しても、2014年に新規着工された原発は、わずか3基にとどまる。それでもWHのダニエル・ロデリック社長は、「原子力の需要は高まっている。来年にはインドで契約が結べると考えている」と自信を見せる。

だが、STPのほか、現状を鑑みるに、新たな64基受注計画も厳しいことは疑いない。東芝のあまりにも楽観的すぎる見通しに対し、今後ものれん減損など不安材料がつきまとう。

                        (撮影:尾形文繁)

富田 頌子 東洋経済 記者

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とみた しょうこ / Shoko Tomita

銀行を経て2014年東洋経済新報社入社。電機・家電量販店業界の担当記者や『週刊東洋経済』編集部を経験した後、「東洋経済オンライン」編集部へ。

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