シャープ、液晶事業売却に「ノーコメント」 下方修正で経営再建への道のりは視界ゼロ
「その件については交渉中のため、お答えすることはできない」。
10月30日に行われた、シャープの2016年3月期第2四半期(4~9月期)決算説明会。焦点の液晶事業の再編について、高橋興三社長からは、最後まで明確な回答が得られなかった。
第2四半期は営業赤字251億円に転落(前年同期は292億円の営業黒字)。決算発表前の10月26日には、通期計画について、従来の営業利益800億円から100億円に下方修正している。下方修正の大部分は、シャープの屋台骨である液晶事業の不振だ。主要顧客の中国スマートフォン(スマホ)メーカーが、現地市場の減速と、米アップル「iPhone」による著しいシェア拡大を受け、成長が鈍化したことが背景にある。
「当初の計画を立てた時点では、中国スマホ市場の減速を見込んでおらず、(シャープが強みとする)高精細・高価格帯品へ需要がシフトするものと予想していたが、大きく外れた」(高橋社長)。競争激化による販売価格の下落や、数量減による工場稼働率の低下も、営業利益を圧迫する要因になった。シャープの三重第3工場は、中国のスマホメーカー向けに液晶を生産する拠点だが、現在の稼働率は1割とも言われている。
単独では投資余力がない
シャープにとって液晶は、過剰投資で経営危機を引き起こした元凶であるとともに、経営資源を最も注いできた”虎の子”だ。主力のスマホ向け中小型液晶市場では、高精細・高価格帯のLTPS(低温ポリシリコン)液晶の引き合いが強まっており、競争力維持のためには、さらなる投資が必要とされる。しかしその余力は今のシャープにはない。
2015年3月期には2223億円の最終赤字に陥り、銀行による債務の株式化(DES)や人員と資産のリストラで、経営破綻は免れたものの、経営再建の道筋はいまだ見えていない。今まで自社での事業継続にこだわりを見せてきたシャープ経営陣も、7月末には液晶事業の売却など外部資本を活用した経営再建について、「可能性を考える」(高橋社長)と方針転換を明らかにしていた。
それから3カ月、液晶事業の今後について何らかの方針の提示が期待された決算会見で、高橋社長は終始言葉を濁すだけだった。
「会社名をお伝えすることはできないが、現在複数社と協議に入っている。(結論を出す)時期についても、現時点では申し上げられない」(高橋社長)と、交渉途中であることを理由に、詳細は一切明かさなかった。
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