NECがトップ交代、託された重いバトン 就任6年の節目で遠藤社長は会長へ

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京大時代にアメフト部に所属していた新野副社長は「アメフト部卒といってもいいくらい、アメフトに注力していた」(遠藤社長)。新野副社長の在学時代は、京大を強豪校にした立役者で、新野副社長と同じ京大工学部出身の水野彌一氏が監督を務めていた。

「科学的でシステマティックな練習だった。アメフトは攻めと守りのすべてのフォーメーションが決まっていて、全体を動かし、作戦を立てて、きちんと動かすことを学んだ」(新野副社長)。

NEC入社後の33年間、新野副社長は金融機関向けを中心に現場のITソリューション営業をしてきた。自らを最も成長させた仕事は、セブン銀行向けのコンビニATMの導入を事業部長として手掛けたことだという。

「大きさも決められているし、省エネでなければいけない。警備会社などと新たなビジネスモデルをイチから作り上げた。セブンイレブン向けのコンビニATMは2万数千台。単一の製品としてこれだけの台数があるものはないのではないか」(新野副社長)。

グローバル展開が次期社長の課題

NECの経営立て直しを進めた遠藤社長。表情は終始、晴れやかだった。

遠藤社長は、事業構造改革の途上で、リーマンショックの衝撃がまだ冷めやらない2010年4月に就任。初年度末には東日本大震災があり、2011年3月期、2012年3月期は2期連続の最終赤字だった。

ただ、営業利益ベースでは就任後は3期連続の増益で、2013年3月期には1000億円台を回復している。最終利益も2013年3月期には黒字化し、今期は3期連続増益を達成する見込みだ。

それにもかかわらず、遠藤社長が自らの6年を振り返り「60点」と厳しく自己採点したのは、海外比率がまだ20%と低いことなど、次期社長に引き継ぐ課題があるからだ。「次の3年間で海外が30%、40%を狙える企業にならないとグローバルで戦えない。NECはよい技術とよい顧客を持っているが、グローバルに価値創造する企業文化が足りない」(新野副社長)。

新野副社長は、遠藤社長の右腕として、シンガポールにグローバルディビジョンを設置するなどグローバル戦略に携わってきた。遠藤社長は会見で「企業は継続が大事である」ことを何度も強調した。遠藤時代で立て直した体制をいかに維持・発展するか。次の時代に託されるバトンは重い。

                         (撮影:尾形文繁)

山田 雄一郎 東洋経済 記者

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やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

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